eぶらあぼ 2021.4月号
40/129

日本勢の活躍が光る室内楽公演も充実のラインナップ 室内楽関連でも興味深い企画が多数進行中だ。 一つのテーマを軸に時代背景と併せ音楽を聴くマラソン・コンサート、今年のお題は「メルヒェンの時代へ…フンパーディンク没後100年に寄せて」だ。森を舞台に魔法が重要な役割を果たすメルヒェン・オペラはドイツ音楽の重要な一ジャンル。今でもドイツではクリスマスシーズンになると《ヘンゼルとグレーテル》が劇場の演目を飾る。今年はその作曲者へのオマージュとして、メルヒェンを巡る音楽を追っていく(4/10)。 東京春祭はこれからを担う若手・中堅世代が切磋琢磨していく場にもなっている。昨年、ベートーヴェンのトリオ全曲演奏で鮮烈な存在感を示したトリオ・アコード(ヴァイオリン:白井圭、チェロ:門脇大樹、ピアノ:津田裕也、3/29)、郷古廉(ヴァイオリン)と加藤洋之(ピアノ)はチェロの横坂源とともに(4/16)、いずれも東欧や西アジアのエキゾティックな作品を聴かせてくれる。 古楽系ではフォルテピアノの川口成彦を独奏者に据えたラ・ムジカ・コッラーナによる古典派プログラム「ピリオド楽器で聴くモーツァルト&ベートーヴェン」(4/12)や、チェンバロ&バロック・ハープの西山まりえをはじめ、定評のある古楽奏者たちが結集した「イタリア~狂熱のバロック歴遊」(4/17)が面白そう。 ストラヴィンスキー(4/8)やブリテン(4/11)といった、一人の作曲家を継続的に紹介するシリーズも名曲・珍曲を取り揃え、ここでしか聴けないプログラミングとなっている。 上野は明治以降、文化の発信地として発展し、戦前の建築様式を残した東京国立博物館をはじめ美術館・博物館がひしめいている。アートを感じられる空間で行われる音楽会にも、また格別な趣がある。 定番となった「東博でバッハ」シリーズ、今年はギターの大萩康司(3/23)、チェロの木越洋(3/29)、ピアノの菊池洋子(3/30)、サクソフォンの住谷美帆(4/15)、ヴァイオリンの玉井菜採(4/21)の5回が組まれている。アコーディオン(大田智美)と共演する住谷、エネスクやイザイをプログラムに組み込んだ玉井の回がユニークだ。 東京都美術館では「美術と音楽」をテーマに、各演奏家が自分のお気に入りの美術作品に関連する作品を演奏する(4/3, 4/4, 4/11, 4/13, 4/16)。改修休館中の西洋美術館でのコンサートは東京文化会館小ホールに移動、同美術館の松方コレクションに含まれるミレー、ドニの名品にちなんだ作品を取り上げる(3/20, 3/24)。上野の森美術館では現代美術の最先端を展望するVOCA展とのコラボ企画として、「現代美術と音楽が出会うとき」をテーマに2つのコンサートが予定されている(3/20, 3/27)。 ほかにも子どもが楽しめる東京春祭 for Kids「子どものためのワーグナー《パルジファル》」(3/27, 3/28, 3/31, 4/3, 4/4)や、未だ流動的だが海外勢による歌曲シリーズなど、注目公演が目白押し。公式サイトを要チェック!ミュージアム・コンサート「篠﨑和子(ハープ)〜現代美術と音楽が出会うとき」(2020年)より ©増田雄介アートと音楽のコラボレーション! 東京春祭ならではのコンサートトリオ・アコード ©T.Tairadate横坂 源 ©Takashi Okamoto加藤洋之郷古 廉©Hisao Suzuki

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る