東京文化会館をメイン会場とし、美術館や博物館からの配信を通じて、上野の春の空気感も届けたいと芦田は語る。 芦田「演奏者と聴衆との距離を近づけ、リアルタイムの交流などをいかに図るかといった課題もありますし、まだネット配信そのものに対する抵抗感をお持ちの方もいます。良質な有料ライブ配信を広く認知させていくには、今が正念場。高度な配信技術を持つIIJと連携した東京春祭だからこそ、先鋭的・実験的な取り組みへの期待にお応えしていきたいです」●上野の春の空気感も届けたい左より:福田一則(株式会社インターネットイニシアティブ ネットワーククラウド本部 デジタルコンテンツ配信部長)、芦田尚子(東京・春・音楽祭実行委員会事務局長)、木村和人(株式会社インターネットイニシアティブ ネットワーククラウド本部 副本部長 兼 アプリケーションサービス部長)通常の配信映像。これまでに東京春祭が積み重ねてきた動画配信の技術を生かした、有料コンテンツとしてのクオリティを担保するチャンネルノーマル視聴者が自分の見たいカメラアングルを選んで鑑賞できるチャンネル。ステージ全体のほか、奏者の表情、手元、楽器のクローズアップなど、カメラ4〜5台をスイッチできるマルチアングルオペラなど字幕を付けて鑑賞したい公演に設定されるチャンネル字幕4K映像でロスレス音質(48kHz/ 24bitの高音質)で楽しむチャンネル。大画面や本格オーディオなどでの鑑賞にも最適高画質・高音質 マルチアングルと高画質・高音質、字幕の配信は、芦田が語る「実験的な取り組み」にあたり、一部の公演に追加される機能だ。私たちが「生のコンサート」で体験している感覚や、能動的に鑑賞を楽しむ姿勢に応えてくれる仕掛けである。公演により導入される機能は異なるが、3月7日にはこれらを試すことのできる「試聴配信(ライブ)」も実施されたのでご覧になった方もいるだろう。 福田「視聴者の皆さんが、なるべく簡単に操作できる工夫も凝らしています。自宅のくつろいだ環境でワインを楽しみながらとか、外出先でタブレットを操作しながらとか、それぞれの視聴環境に応じた多様なスタイルでお楽しみいただきたいですね。また、コンサート制作側へのご提案として、一人のコントローラーがリモートで複数台のカメラを動かすようなシステムも試行します。いずれはスタッフが現場に入らなくても、ホール収録が可能になる日が来ることでしょう」福田一則●多彩なプログラムを最新の配信技術で楽しむ 木村「生演奏で味わえる良さを、いかにネット配信にも持ち込めるか。逆に、ネット配信だからできることとは何か。その両軸で考えていかなければ、結局は『生演奏がいいよね』で終わってしまう。単にライブ映像を流すというだけではなく、何かもう一枚仕掛けがほしいと思いました」 そこで今回導入されるのが、多チャンネル式のライブ配信だ。つまり、一枚の配信チケットを購入すれば、いくつかの選択肢(チャンネル)の中から、その公演を自分の好みに応じたスタイルで楽しむことができるのだ。現段階で実施予定の機能は以下のとおり。木村和人
元のページ ../index.html#38