106SACDCDFour Elements Vol.3:Winds/小菅優シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレイト」/太田弦&新日本フィルティンパニ作品集 Vol.1:ソロ/上野信一リフレクションズ/ヴィキングル・オラフソンダカン:かっこう、荒れ狂う嵐/クープラン:小さな風車/ラモー:鳥のさえずり/西村朗:カラヴィンカ/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」/ドビュッシー:「前奏曲集第1巻」より〈帆〉〈野を渡る風〉〈西風の見たもの〉/ヤナーチェク:霧の中で小菅優(ピアノ)シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレイト」太田弦(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団一柳慧:リズム・グラデーション/岸野末利加:モノクロマーガーテンⅢ/松下功:オプティカル・タイム/カーター:4台のティンパニのための8つの小品上野信一(ティンパニ)ドビュッシー:前奏曲集第2巻第5曲「ヒース」、同第10曲「カノープ」、ピアノのために/ラニ:選ばれし乙女/ヨンソン:フットステップス(ドビュッシーの「雪の上の足跡」による)/バズーラ:水のミューズ(ラモーによる)/オラフソン:リフレクション(ドビュッシーの「ヒース」による即興) 他ヴィキングル・オラフソン(ピアノ)ハニャ・ラニ(ピアノ/エレクトロニクス)ヘルギ・ヨンソン(ヴォーカル/シンセサイザー) 他Orchid Classics/ナクソス・ジャパンNYCX-10201 ¥2500+税収録:2020年7月、すみだトリフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00742 ¥3200+税コジマ録音ALCD-7254 ¥2800+税ユニバーサル ミュージックUCCG-1881 ¥2800+税テーマに沿った選曲で組み立てる演奏会に取り組んできた小菅優。今回は「風」を主題に古今の作品を自由に並べた。バロックのシンプルで可愛い小鳥たちのさえずりが、強烈なトレモロによって妖しい光を発する「カラヴィンカ」(西村朗)へと瞬時に変身する。「テンペスト」(ベートーヴェン)では重い打鍵により嵐と静寂の対比が浮かび上がり、ドビュッシーで風は自然のざわめきを喚起する生命の運動となる。孤独な魂の遍歴を思わせる「霧の中で」(ヤナーチェク)で終えるまで、意外な取り合わせに翻弄されつつも、いつの間にか飲まれるように、それぞれの視点で描かれた風の諸相に聴き入っていた。(江藤光紀)東京藝大で学び、2015年の東京国際音楽コンクール〈指揮〉で2位を獲得した1994年生まれの俊英、太田弦のデビュー盤。帰国が叶わぬ上岡敏之に代わって振ったこの大曲で、彼はエネルギーに溢れた音楽を展開している。全体にテンポは速め。第1楽章の序奏からキビキビと運び、主部も力強くグングンと進む。遅い第2楽章も同様で、伸びやかにして力感を失わない。第3楽章はトリオを含めて実に歯切れ良く、第4楽章も快活に突き進む。メンデルスゾーンの「イタリア」のような“溌剌とした古典的交響曲”の趣を感じさせる、若きマエストロの瑞々しい記録。(柴田克彦)日本を代表する打楽器奏者、上野信一による破格の完全ティンパニ・ソロ・アルバム。オーケストラでのこの楽器の一般的なイメージしかない方にとっては驚愕の一枚となるのではないか。様々な特殊奏法によるあまりに多彩な音色の創出と変幻自在な音程の操作、リズムの妙味。岸野作品においてはチャイムなどの楽器も加わり、その幽玄かつ深遠な音世界はとても打楽器のみによるものとは思えまい。エリオット・カーター作品では8曲のそれぞれが当時活躍していたアメリカのティンパニストに献呈されており、この楽器の演奏上の可能性が極め尽くされている。作品、演奏共々稀有なアルバム。(藤原 聡)前作『ドビュッシーーラモー』で約200年の時を隔てた二人の天才作曲家の鍵盤音楽を対話させ、そこから作品の真価を炙り出した新時代のコンポーザー・ピアニストによる、その続編的アルバム。ジャンルにとらわれない最先端アーティストが手掛ける瞑想的なリワーク作品は、ぜひ前作とも聴き比べを! 特に同郷アイスランドの鬼才ヘルギ・ヨンソンがドビュッシーの前奏曲「雪の上の足跡」を元に多重録音で作り上げた野心的な歌曲などは必聴。たとえ原曲でも、アップライトの内側にマイクを仕込んで録音したサウンドなどに思わず耳をそばだてて聴き入ってしまうはず。(東端哲也)CDCD
元のページ ../index.html#109