eぶらあぼ 2021.4月号
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102CDCDCDベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番/エルデーディ弦楽四重奏団リスト:巡礼の年 第1年「スイス」/青柳晋ジョーカー/菊本和昭&佐竹裕介Meine Lieder/黒田祐貴ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番エルデーディ弦楽四重奏団【蒲生克郷 花崎淳生(以上ヴァイオリン) 桐山建志(ヴィオラ) 花崎薫(チェロ)】リスト:巡礼の年 第1年「スイス」青柳晋(ピアノ)ヘーネ:スラヴ幻想曲/武満徹:径(みち)/ペンデレツキ(ルートヴィヒ編):トランペット小協奏曲/ヴェベル(タール編):変奏曲 ヘ長調/ヒダシュ:幻想曲/クチェラ:ザ・ジョーカー/ネスラー(タール編):歌劇《ゼッキンゲンのトランペット吹き》より〈若きヴェルナーの別れのアリア〉菊本和昭(トランペット)佐竹裕介(ピアノ)ロッシーニ:歌劇《セヴィリアの理髪師》より/モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より/ブラームス:私の歌/マルクス:かつてのように/R.シュトラウス:君を愛す/マーラー:美しいトランペットが鳴り響くところ/コルンゴルト:歌劇《死の都》より/山中惇史:おんがく 他黒田祐貴(バリトン)山中惇史(ピアノ)コジマ録音ALCD-1205 ¥2800+税パウSBCD-101 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCC-00161 ¥3200+税日本コロムビアCOCQ-85519 ¥2000+税エルデーディ弦楽四重奏団のベートーヴェン後期弦楽四重奏曲集第4弾完結篇は第15番。結成30余年のベテラン楽団の集大成といえる。深遠な序奏に続くアレグロは生き生きと進む。第2楽章の対位法的なレントラーも、ミュゼット風で民族舞曲風のトリオも精緻に紡がれる。そして中心楽章「聖なる感謝の歌」がとても美しい。コラールはヴィブラート少なめの清澄な響きで心が洗われるかのよう。典雅に躍動する「新しい力」挿入部を経て、2回目と3回目の「感謝の歌」は、まさに美の極致だ。繊細に声部の絡む天上の歌から深い感銘を受ける。行進曲から雄渾な終曲まで、素晴らしく感動的だ。(横原千史)青柳晋にとって、リストという作曲家は特に大切な存在である。昨年自主企画シリーズ「リストのいる部屋」Vol.15を終え、これまで真摯にリストに向き合ってきた彼が満を持して「巡礼の年 第1年」全曲に挑んだ。コロナ禍にじっくり作品と対峙し録音したという演奏は、音の一つひとつの密度が濃く、さらに多面的な輝きを放っている。技巧的なパッセージを鮮やかに弾きこなしているのはもちろんだが、音の少ない作品になればなるほど、質量が感じられる豊かな響きと色彩の変化にとんだ音色が放たれ、リストの込めた想いや哲学に対峙するような感覚に陥る。 (長井進之介)N響首席トランペット奏者の菊本和昭による10年ぶりのソロ・アルバムは「ドイツから東方への旅」というテーマで、ドイツから日本の5ヵ国の作曲家が並ぶ。地理ばかりか時代も200年にわたる作品群が絶妙に配列され、刺激的で楽しい。通して体感することで、時代や様式を問わず、この楽器に託されてきた「歌心」に通底するものも伝わる。そういった発見も、菊本の温もりと透明感のある音色、安定した名技があってこそ。武満徹の透徹した歌、ペンデレツキの技巧、ニヤリとさせられるクチェラの表題作、ネスラーの19世紀メルヘン・オペラの旋律美など、どの曲も変化に富んで印象に残る。(林 昌英)次世代を担うアーティストを紹介する日本コロムビアの「オーパス・ワン」レーベル、その第3弾からバリトンの黒田祐貴。ここではイタリア語とドイツ語の歌が取り上げられているが、どの歌も様式的に全く違和感なく実に自然に歌い分けている点に黒田の非凡さが浮き彫りになる。明晰かつ丁寧なディクションと豪放磊落さが備わったロッシーニ、儚く夢幻的な空気と甘美な情感を漂わせるコルンゴルトなど実に見事なものだ。こののち黒田が真の大歌手になろうとも、この若き日の録音の価値は揺るがないであろう。ヴィヴィッドな山中惇史のサポートも抜群。入念なセッション録音ゆえ音質も極上だ。(藤原 聡)SACD

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