eぶらあぼ 2021.4月号
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100SACDCDCDCDショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」/インバル&SWR交響楽団高橋悠治 ピアノ・リサイタル“白鳥の歌”四題/宮本益光J.S.バッハ:インヴェンションとシンフォニア/樋口紀美子ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」エリアフ・インバル(指揮)SWR交響楽団ポール千原:4つのベートーヴェン幻想/リンダ・カトリン=スミス:ノクターンとコラール/戸島美喜夫:鳥の歌/高橋悠治:コスギに/ブランカフォルト:モンポウに捧げる悲歌/ベートーヴェン:「告別」ソナタ高橋悠治(ピアノ)シューベルト:「白鳥の歌」より、ミューズの児、楽に寄す/ブラームス:「4つの厳粛な歌」より/ヴォルフ:ミケランジェロの詩による3つの歌曲/マーラー:「リュッケルトの詩による5つの歌曲」より宮本益光(バリトン)髙田恵子(ピアノ)J.S.バッハ:インヴェンション、シンフォニア樋口紀美子(ピアノ)収録:2018年11月、シュトゥットガルト(ライブ)SWR Classic/ナクソス・ジャパンNYCX-10202 ¥2600+税収録:2020年7月、浜離宮朝日ホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4088 ¥3000+税妙音舎MYCL-00003 ¥3200+税N&FMF25705 ¥2800+税ドイツ南西部の名門2楽団が2016年に合併してできたSWR交響楽団は、現在クルレンツィスが首席指揮者、トロンボーン首席を清水真弓が務めるなど、注目の楽団。18年客演のインバルは得意のショスタコーヴィチ11番を取り上げ、豊かで強力な金管のサウンド、厚みと渋さを備えた弦の音色を中心に、引き締まった音響でエネルギーを引き出す。ライブの乱れはあるものの、近年の円熟味とオケの魅力の融合で、強靭な響きに温かみすら感じられ、第2(前半)・第4楽章など独特の好演。なお、インバルの意図であろう、看過できない打楽器の音の省略(特に結尾の鐘!)があることは指摘しておく。(林 昌英)もはやレジェンド的存在の高橋悠治による昨夏のライブ録音。マイスター・ミュージックでのリサイタル・シリーズ第4作にあたる。まずは、2010年代の3曲を含む5つの現代作品と、その内の1曲、ポール千原の「4つのベートーヴェン幻想」(この曲は面白い!)に関連する「告別」ソナタを組み合わせた構成が妙味十分。現代曲の1音1フレーズに自然な陰影と息吹を付与しながら、「告別」ソナタの快演に至る内容は、まるで1つの“作品”のようだ。そして周到に彫琢されていく透徹した音世界が、他では味わえない感覚を与えてくれる。これは傾聴すべき一枚。  (柴田克彦)歌い手に留まらず多才な活動で知られる“バリトン王子”の最新録音はロマン派4人の最晩年ドイツリートで綴った美しいプログラム。ハイネの詩ばかりを集めたシューベルトの6編、愛するクララの死が迫る中でブラームスが書き上げた“厳粛な”3編、時に哲学的ですらあるヴォルフの3編、そしてリュッケルト集から超俗の響きに満ちたマーラーの3編と、いずれも人間の生と死を見つめた曲目。アンコール曲のようなシューベルト〈ミューズの児〉と〈楽に寄す〉が、同内容で1985年10月に公演を成功させた師・高橋大海へのオマージュ感をさらに深めているのも見事。(東端哲也)何と端正な演奏だろうか。古楽ムーヴメント隆盛の今、モダン・ピアノできちんとバッハを弾ける演奏家は、意外に少ない。しかし、そこはドイツに学び、数々の登竜門で実績を残し、長らくヨーロッパで演奏活動を重ねた、実力派の樋口紀美子。まさに満を持しての録音で、バロックに特有の様式的な作法や語法を踏まえつつ、楽器自体の鳴らし方はもちろん、演奏空間の残響すら味方につけて、モダン・ピアノならではの音創りを真摯に探究。“練習曲”という側面からも目を逸らすことなく、バッハが2声や3声のシンプルな枠組みの中に封じ込めた、対位法の美学をつまびらかにしてゆく。(笹田和人)

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