84CDCDCDCDピカレスク 無伴奏チェロ作品集/丸山泰雄デュオ・ココン plays シューベルト&ベートーヴェンショパン:エチュード全集/上野真トゥルヌミール:十字架上のキリストの7つの言葉による7つのコラール詩曲、3連コラール/高橋博子ソッリマ:コンチェルト・ロトンド/平野義久:ピカレスク~丸山泰雄に捧ぐ~/ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番/プランチャルーン:ファー・フロム・ホーム/グラス:オービット丸山泰雄(チェロ)シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ イ長調/ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」デュオ・ココン【糸原彩香(ヴァイオリン) 佐伯麻友(ピアノ)】ショパン:12の練習曲集op.10,op.25、3つの新練習曲上野真(ピアノ)トゥルヌミール:3連コラール(聖三位一体)、十字架上のキリストの7つの言葉による7つのコラール詩曲高橋博子(オルガン)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9031 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7938 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCT-00178 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9217 ¥2800+税よくもこれだけの難曲を集めたものだ。スペクトル楽派とも民族音楽ともロックともつかないソッリマの「コンチェルト・ロトンド」からぶっとびの難しさ。TVや映画の劇伴で著名な平野義久はシリアスな音楽でも見事な尖りっぷりだ。表題作「ピカレスク」は落語の独演会をイメージした粋でクールな作品。ブリテンの大作「無伴奏チェロ組曲第1番」の後、フラジオレットの煌めきや激しい打撃音の中でタイの伝統音楽が浮遊するプランチャルーンの「ファー・フロム・ホーム」を経て、グラスのバッハを思わせる内省的な「オービット」で閉じる。チャレンジ精神でぶつかる丸山の充実ぶりが伝わる。(江藤光紀)結成7年目を迎えるデュオ・ココンのデビュー盤は、シューベルトとベートーヴェンの名作という、硬派かつ意欲的な曲目。「楽譜に忠実に」を信条として、恣意的な強弱や揺れで効果を狙うことなく、糸原彩香のヴァイオリンは控えめなヴィブラートで清純な音色を作り、佐伯麻友のピアノはそれを包み込みつつ力感を加えていく。その演奏スタイルとシューベルト20歳の佳品は好相性で、瑞々しい感性が伝わる。「クロイツェル」は35分かけてじっくり構築、外連味ない表現をベースとしながらも、曲のエネルギーで自ずと熱気を帯びていく様が好感抜群。「楽譜通り」とはこのことだろう。(林 昌英)上野真の活動は、ピアノという楽器とその音楽および演奏習慣がいかに多様性に満ちているかを真摯に知らせてくれる。ショパン時代の楽器(プレイエルやエラール)による録音などを行なってきた上野が、今回の練習曲集全曲を収録する上で選んだのは、現代の名器ファツィオリF308である。その巨大なボディがもたらす豊潤なゆとりある響きが、ショパンのデリケートな音楽語法を精細に伝え、たとえばop.10-6など、驚くほど豊かなニュアンスを聴かせる。「新定番」となってほしい一枚だ。ショパン研究に関してまとめたブックレットの上野の文章も目の覚めるような内容。(飯田有抄)音は常に鳴り渡り、楽想は時に激しさすら纏うのに、なぜか感じる静謐さ。一見平穏な水面にも、ハーモニーの推移やレジストレーションによる色彩変化が、さざ波を立てる。フランクの流れを汲む、近代フランスのオルガニストで作曲家、トゥルヌミール。ハイドンら多くの先人が、複数の器楽や声楽を使って音楽化した「十字架上の7つの言葉」を、彼は1台のオルガンに託した。神へ赦しを乞い、死へと昇華するキリストの姿を追うドラマ。ドイツに学んだ名手・高橋博子は、その特性を知り尽くした新宿文化センターのケルン社製の銘器で、奥行きの深い響きの宇宙を丹念に形創ってゆく。(寺西 肇)
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