36広上淳一(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ボヘミアの大家の“陰の名曲”を一挙に堪能文:柴田克彦第64回 ティアラこうとう定期演奏会3/6(土)15:00 ティアラこうとう問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp オーケストラのドヴォルザーク・プロといえば、「謝肉祭」序曲、チェロ協奏曲、交響曲第9番「新世界より」(又は第8番)の並びが定番だ。だがチェコ随一の大家の魅力はこれに留まらない。そこで演奏機会がグンと少ない名作に焦点を当てたのが、3月の東京シティ・フィルのティアラこうとう定期である。 1曲目の交響詩「真昼の魔女」は、アメリカ滞在(「新世界より」等を生んだ)から帰国後の名品の1つで、魔女が母子を襲う内容が描かれている。音楽は劇的かつ親しみやすく、晩年の作風を知る妙味もある。おつぎはヴァイオリン協奏曲。中期「スラヴ時代」に書かれたこの曲は、地元の民族色とソロの名人芸が共に満載されており、ボヘミアの香りはチェロ協奏曲以上に濃厚だ。後半は交響曲第7番。西欧的な交響曲様式とボヘミア情趣、緊密な構成と美旋律のバランスが絶妙な作品で、絶対音楽としての完成度の高さは第8、9番を上回る。 指揮は国内外の第一線で活躍する広上淳一。生気に充ちた表現に幅と深みを加えている彼が、“陰の名作”にいかなる精彩をもたらすか? がまずは注目点となる。また広上が東京シティ・フィルの定期公演を振るのは、2016年12月以来のこと。伸長著しい今の同楽団とのコンビネーションも興味をそそる。協奏曲のソロは、11年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール第2位入賞以来、充実した活動を続ける小林美樹。艶と潤いのある音色、力強くも温かな表現は曲に相応しく、彼女の演奏の成熟度にも期待が注がれる。 これは人気作曲家の深奥を生きのいい演奏で堪能できるコンサートだ。第10回 音楽大学フェスティバル・オーケストラ世界的巨匠に率いられ「ダフニスとクロエ」全曲に挑戦!文:林 昌英3/27(土)15:00 東京芸術劇場コンサートホール 3/5(金)発売問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 https://www.geigeki.jp 3/28(日)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール 3/5(金)発売問 ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200 https://www.kawasaki-sym-hall.jp 音楽を学ぶ学生たちは、この1年、授業や演奏の場が減るなどの影響を受け続けてきたが、年度の締めくくりの一大イベント「音楽大学フェスティバル・オーケストラ」は開催の運びとなっている。首都圏の9つの音楽大学の交流を目的に始まった「音楽大学オーケストラ・フェスティバル」の特別編として、2011年度以来、年度末に各大学の選抜メンバーによるオーケストラ公演が開催されている。若者たちが短期間で楽団としてまとまり、トップクラスの指揮者の真剣指導を受けられる意義深い舞台であるが、昨年は残念ながら中止になり、今年にかける思いは強い。 演目はラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲の一本勝負。多彩な特殊楽器を含む大編成で、ア・カペラの合唱も付く大作だが、今回は合唱団の参加は見送られた。とはいえ、合唱なしでも成立できる楽曲だし、むしろラヴェルの緻密な管弦楽法の粋を堪能できる好機ともいえるだろう。 マエストロはフランスの名指揮者シルヴァン・カンブルラン。読売日本交響楽団の常任指揮者を長く務め、その機能性を著しく高めて色彩感あふれる名演を重ねた、世界的名匠である。彼の「ダフニス」となれば、まずは無条件に聴きものだし、ラヴェル演奏の奥義の一端が若手奏者たちに継承される貴重な現場ともなる。 若者たちを応援する機会としても、カンブルランのラヴェルを堪能するチャンスとしても、心から楽しみな公演であり、無事の開催を願ってやまない。シルヴァン・カンブルラン ©読売日本交響楽団小林美樹 ©Shigeto Imura広上淳一 ©Masaaki Tomitori
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