eぶらあぼ2021.3月号
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34 ©井村重人小澤征爾音楽塾 特別公演 2021 3/23(火)19:00 東京文化会館 2/20(土)発売問 ヴェローザ・ジャパン03-6411-5445 https://ozawa-musicacademy.comhttps://tiget.net/tours/ongakujuku(ライブ配信)黒川実咲(チェロ)“マエストロ小澤体験”を共有する音楽家が奇跡のサウンドを生み出す取材・文:小室敬幸Interview 日本だけでなく世界中の音楽ファンが待ち望んでいるのが、小澤征爾が元気に指揮をする姿であろう。本番に出演する機会は著しく減ってしまったが、それでも体調が許す限り熱心に続けているのが「小澤征爾音楽塾」に代表される教育活動である。今年は恒例のオペラ・プロジェクトの代わりに特別公演を実施。塾生やOB・OG、講師陣から構成される小澤征爾音楽塾オーケストラには世代を超えた豪華な顔ぶれが揃う。指揮はN響にも客演するディエゴ・マテウス(ドゥダメルの後輩!)が務め、リハーサルには音楽監督として小澤も立ち会う予定だ。 「小澤先生がその場にいるだけで、自分から出る音がぜんぜん違うんです!」 そう熱く語るのは、これまで何度となく音楽塾などで小澤の指揮に接し、3月の公演にも参加する若手チェリスト、黒川実咲(東京フィルのフォアシュピーラー)だ。 「以前、小澤先生の指揮でショスタコーヴィチの8番の四重奏を弦楽合奏(※バルシャイ編の室内交響曲)で演奏したのですが、そのあとに自分たちのクァルテット4人だけで演奏した時にも合奏のような凄い音が出るんですよ…。先生と演奏した時の音が染み付いちゃっているので、気づいたらそういうサウンドになってしまうんです!」 この音楽塾が立ち上がった2000年以降、多くの若手音楽家がこうした得難い経験をしてきたに違いない。黒川も今の自分があるのは、塾での体験が大きいという。 「かつては自分が中心となる独奏曲ばかりが好きだったのですが、音楽塾に参加したことでオペラやシンフォニーってこんなにも素晴らしいのかと衝撃を受けました。だからこそ今はオペラやバレエの公演も多い東京フィルで日々、今度はどんな舞台に乗れるんだろうってワクワクしてるんです」 ソリスト志望だった優秀な若手たちが小澤から薫陶を受けることで、世代交代が進むオーケストラの新たなメンバーとなっているようだ。また、黒川は人生最大の感動体験をこう語る。 「先生はお年を召された現在も、音楽に対してどこまでも純粋なんですね。とてもフレンドリーで、誰でも年齢に関係なく同じ音楽家として話してくださります。だからこそオケのメンバーが一体となって、信じられないような音が鳴り出すのです。2年前に演奏した時には、今まで味わったことのない感覚に、私自身、涙も鼻水も止まらなくなり、他の皆も号泣していました。いま思い出すだけでも泣けてきますね…」 小澤と若い音楽家たちの邂逅によって、人生観が変わるほどの音楽が生み出されている。今回の特別公演もそうした場になること間違いなし。マエストロからの信頼も厚いマテウスがタクトを執るプログラムは、チャイコフスキーの弦楽セレナード、ベートーヴェンの交響曲第1番ほか。ライブ配信も行われる。指揮台には不在でもホールに鳴り響く、“小澤サウンド”を聴き逃がすな!浅野真弓(ピアノ) 室内楽シリーズ第6回 with クァルテット・エクセルシオソロ・三重奏・五重奏による名曲コンサート弦の名手たちと繰り広げる起伏に富んだアンサンブル文:笹田和人 作品の核心に迫る、瑞々しいプレイで魅せる実力派ピアニストの浅野真弓が、2017年から続けている「室内楽シリーズ」。毎回、弦楽器の名手たちを迎えて披露される、緻密なアンサンブルが人気を呼ぶ。第6回は、クァルテット・エクセルシオとの共演。ブラームスのピアノ五重奏曲を軸に、室内楽の愉悦を届ける。 桐朋学園大学からマンハイム芸術大学大学院に学び、マリア・カナルス国際コンクール第3位入賞など、登竜門で実績を重ねた浅野。ソロはもちろ3/18(木)19:00 王子ホール問 フューチャーデザイン03-5206-5501http://www.mayumi-asano.comん、卓越した室内楽奏者としても知られる。日本を代表する弦楽四重奏団であるエクセルシオとは、シリーズ第3回でも共演し、高い評価を得た。 今回は、ブラームス青年期の傑作「ピアノ五重奏曲」に加え、エクセルシオの西野ゆか(ヴァイオリン)、大友肇(チェロ)とともに、洗練された作曲技法と民俗的な土臭さが同居するハイドン「ピアノ三重奏曲第25番『ジプシー風』」を披露。さらに、浅野のソロでノクターン第20番、同第2番や「別れの曲」「革命」のエチュードと、ショパンの傑作を添える。

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