eぶらあぼ2021.3月号
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32新日本フィルハーモニー交響楽団 室内楽シリーズ ⅩⅦ~楽団員プロデューサー編~#140 「同時代に生きた作曲家たち」 知られざる20世紀前半の佳作を色彩豊かに描く文:長谷川京介4/14(水)19:15 すみだトリフォニーホール(小)問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 毎回独創的なプログラムが好評の、新日本フィル楽団員が企画する室内楽シリーズ。コンサートマスターの西江辰郎がプロデュースする今回は、19世紀末に生まれ20世紀にかけて活躍した同時代の作曲家、ベネズエラ生まれでフランスに帰化したアーン、ハンガリー人のコダーイ、ユダヤ系オーストリア人で合衆国に亡命したコルンゴルトの名曲が並ぶ。 アーンは歌曲で名を馳せたが、西江は〈クロリスに〉の譜面を見て素晴らしい作曲家に違いないと確信、水彩画のように淡く美しい弦楽四重奏曲第2番に出会った。西江、ビルマン聡平(以上ヴァイオリン)、高橋正人(ヴィオラ)、サミュエル・エリクソン(チェロ)の繊細な演奏に期待したい。 コダーイがハンガリーの民族音楽を芸術的に昇華させ、自らの作曲技法を確立した「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」は、ヴァイオリンとチェロが対等にやりとりする激しく情熱的な作品。西江とエリクソンの競演が楽しみだ。 コルンゴルト「ピアノ五重奏曲」はブラームスのそれにも匹敵する名曲。優れたピアニストでもあった作曲者が書いた技巧的なピアノを、第7回トリエステ国際室内楽コンクール(イタリア)デュオ最高位受賞の坂野伊都子が担う。新日本フィルメンバーとの緊密なアンサンブルが聴けるだろう。 西江は「今回の曲目はどれも素晴らしい作品。演奏機会のめったにない曲の中から、共感し、取り組んでみたい、聴いていただきたいと思う作品を集めてみました」と語る。これは聴き逃せないコンサートだ。ビルマン聡平国際共同制作 日本初演・新制作 オペラ《Only the Sound Remains -余韻-》「能」から生まれたサーリアホの美しきオペラ日本初演文:伊藤制子6/6(日)15:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 室内楽からオーケストラ、オペラまで幅広いジャンルで斬新な世界を開示してきたフィンランドの作曲家カイヤ・サーリアホ。6月6日に東京文化会館で、彼女の話題のオペラ《Only the Sound Remains》の日本初演が行われる。 2016年に世界初演された同オペラは、緻密で洗練された音響が描き出す幽玄な世界によって、高い評価を受けた作品。オペラは2部からなり、それぞれ能の「経正」と「羽衣」にもとづく英語台本が使われている。第1部は、詩歌管絃に秀でた平経正をめぐる物語。幼少期に仁和寺で過ごした経正の死後、その死を悼む仁和寺の僧侶の行慶が、管絃講を執り行うと、経正の亡魂が現れる…。第2部は現在の静岡の三保松原が舞台。春のある日、漁師・白龍は美しい衣を拾う。衣なくては天界へ帰れないと涙する天女に同情した白龍は、天女の舞楽を披露してくれれば、衣を返すと約束するのだった。 今回は、ヴェネツィア・ビエンナーレほかとの国際共同制作によるニュープロダクションで、新進気鋭の演出家アレクシ・バリエールを起用。さらにコンテンポラリー・ダンス界の鬼才、森山開次が振付・ダンスを担当するのも楽しみである。経正・天女役は、カウンターテナーのミハウ・スワヴェツキ、行慶・白龍役には、バスバリトンのブライアン・マリーが出演する。サーリアホの世界に通じた万全の陣容で臨むが、古典はもちろん現代作品も得意なヴァイオリンの成田達輝ほか、邦人演奏家たちも集結し、日本初演をもり立てる予定だ。アレクシ・バリエール高橋正人サミュエル・エリクソン坂野伊都子 ©Kazuhiko Suzuki西江辰郎 ©Kazuhiko Suzuki森山開次 ©Sadato Ishizukaミハウ・スワヴェツキブライアン・マリー成田達輝 ©Marco Borggreveカイヤ・サーリアホ

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