25都響スペシャル2021 尾高忠明(指揮) 東京都交響楽団少女の声と麗しきオーケストラが描く生命の賛歌文:飯尾洋一3/15(月)18:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 東京都交響楽団による「都響スペシャル2021」(3/15)の指揮台に登場するのは尾高忠明。武満徹の「系図ー若い人たちのための音楽詩ー」とエルガーの交響曲第1番が演奏される。武満とエルガーという、ともにマエストロ尾高が得意とする両曲が並んだ。 武満の「系図ー若い人たちのための音楽詩ー」は、谷川俊太郎の詩集『はだか』から選ばれた6篇が、少女の語りとオーケストラによって表現される。一人称で語る少女には、本来であれば12歳から15歳くらいの少女が望ましいとされているが、実際の上演ではもう少し年齢の上の女性が配されることも多い。この少女役をだれが朗読するかは毎回注目されるところだが、今回は女優の田幡妃菜に決定。そして、朗読に寄り添う精妙なオーケストラの響きは、詩の内容をニュアンス豊かに伝える(アコーディオン・ソロは大田智美)。 家族がテーマではあるが、ここに描かれる家族像は温かくもあれば、危うくもあり、ドキリとするような真実味がある。ウイルス禍での「ステイホーム」が家族のあり方を改めて考え直す機会になったという方も少なくないと思うが、その意味でもタイムリーな選曲だ。 一方、エルガーの交響曲第1番で描かれるのは、限りなく高貴で、輝かしい希望の世界である。これほど人を勇気づけてくれる20世紀の交響曲もない。今の私たちの心に響くのは、まさしくこういった音楽だろう。尾高忠明 ©Martin Richardsonキアロスクーロ・カルテット古典派四重奏曲の光と影を映し出す大胆なアプローチ文:林 昌英4/6(火)18:00 王子ホール 2/27(土)発売問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp他公演 4/3(土) フィリアホール(045-982-9999) 世界中の名舞台で活躍するヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァは、ソリストとしての華々しい活動と並行して、2005年結成の「キアロスクーロ・カルテット」で弦楽四重奏の奥深い世界も追求している。今年4月には四重奏団として3度目の来日公演を行い、結成15年を経た境地を聴かせる。 「キアロスクーロ」とはイタリア語の「明暗」。19年来日時のテレビインタビューによると、結成当初、ロンドンで学んでいた4人がロジャー・ノリントンの指導を受けた際に言われた言葉で、「光と影」など表現上の対比を意味するという。ロシアのイブラギモヴァをリーダーに、スペイン、スウェーデン、フランス、各国の名手4人が構築する、対比と融合の妙は注目。ガット弦とヒストリカルな奏法による清新な響きを特色とし、ライブでは表現意欲と集中力の高いパフォーマンスを実現、室内楽ファンの高評価を得ている。チェロ以外の3人が立奏するのも特徴で、先の放送でも「立つことで自由になり、心地よく響く」と語っていた。 今度の来日で披露するのは、ハイドン第77番「皇帝」・第35番(op.20-5)、ベートーヴェン第7番「ラズモフスキー第1番」。特に「皇帝」「ラズモフスキー」は古典派四重奏曲の頂点というべき名曲であり、彼らの鮮烈なアプローチで聴けるのは待望の好機。会場は16年の日本デビューから毎回公演を継続している王子ホール。彼らの演奏スタイルに適したサイズと音響をもつ“日本のホーム”で、目のさめるような体験を。左より:クレール・ティリオン、エミリエ・ヘーンルントパブロ・エルナン・べネディ、アリーナ・イブラギモヴァ ©Eva Vermandel
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