eぶらあぼ 2021.2月号
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38©Ayane Shindo佐藤采あやか香(ユーフォニアム)ユーフォニアムの新たな地平を拓く逸材の2ndアルバムとライブステージ取材・文:宮本 明Interview ユーフォニアムの若きトップ奏者・佐藤采香が自身2枚目となるアルバム『軒下ランプ』をリリースする。レーベルは昨年末に始動した「MClassics」。 2018年の前作『Beans』はユーフォニアムのオリジナル作品に的を絞った1枚だったが、今回は半分がバッハやベートーヴェン、メンデルスゾーンなど他の楽器のための作品。そこには、この2年間のスイス・ベルン芸術大学での留学成果が色濃く映っている。 「ユーフォニアムのための作品だけを演奏していたら、身につくものは少ないだろうと、ずっと前から考えていました。どの楽器を演奏していたって、どんな音楽でも演奏できますし」 ベルンにはそんな彼女のための環境があった。 「好きなスタイルの音楽を勉強できるシステムが整っていました。現代音楽とバロックは必修。あとは録音や論文の資料を辿って、それを実践に移すリサーチの授業があったり」 アルバム収録のバッハの無伴奏フルートのためのパルティータ(BWV1013)は、まさにそこでバロックの教授の教えを受けた曲なのだが、面白いエピソードがある。 「その先生はリコーダー奏者なのですが、最初の顔合わせでいきなりため息まじりに、『ユーフォニアムとサックスは、心底聴きたくないんだよね』と言われてしまって…。でもやれることは全部やっていこうと思って、徹底的に準備して初回のレッスンに行ったら、少しの沈黙ののち、『すべて正しい』と認めてくださいました。そこからは、『模倣でなく、ユーフォニアムの響きに合うように工夫してバロック音楽を楽しんで』と、丁寧に教えてくださいました」 実力で楽器への偏見を改めさせたわけだ。 アルバム・タイトルは作曲家・加藤昌則が佐藤のために書いた作品名。軒下にほわっと灯るランプのやわらかい光は、彼女にとってのユーフォニアムの音色のイメージなのだそう。 「奏者と作曲家が出会って作品が生まれ、ソロ楽器として発展してきたという歴史があるように、新しい曲を書いてもらうことが絶対に必要。人生をかけて取り組んでいきたいと思っています」 2月から始まるリサイタル・シリーズでも毎年新作を委嘱していく計画だ(共演はアルバムでもピアノを弾いている清水初海。ゲストにハープの山宮るり子)。 彼女の活動から生まれるのは作品だけではない。留学中、ユーフォニアムの代表的メーカー、ウィルソンに足繁く通い、改良を訴え続けた結果、佐藤の頭文字「AS」が付いたシグネチャー・モデルが発売されることになった。物静かな語り口だが、そのブレない熱意と本気が人の心を動かすのだろう。きっと、ユーフォニアムの新たな地平を拓く人だ。~N響メンバーによる室内楽シリーズ~N響チェンバー・ソロイスツ 第1回 フランス音楽の花園気鋭の実力者たちが集う新しい室内楽シリーズがスタート文:江藤光紀 近年すっかり若返りを遂げたN響。ソリストとしても聴きたい名手たちが各パートをリードしているが、そんな実力者たちがHakuju Hallを舞台に『N響チェンバー・ソロイスツ』と銘打った新シリーズを立ち上げる。演奏会ごとにテーマを決め、それに沿って中堅から若手の奏者が柔軟にアンサンブルを組む。より機動的な形態で幅広いレパートリーにチャレンジする意欲的な企画だ。 第1回は「フランス音楽の花園」。フランスでは19世紀末から20世紀にかけてあまたの傑作器楽曲が生まれ4/6(火)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター  03-5478-8700https://www.hakujuhall.jp福川伸陽た。室内楽も例外ではなく、知られざる名曲がたくさんある。今回はラヴェル(「序奏とアレグロ」、「マ・メール・ロワ」室内楽版)、ドビュッシー(「牧神の午後への前奏曲」室内楽版)に加え、多作家で知られるミヨーがコントラバスを加えた弦楽器のために書いた五重奏曲第2番、洒脱な作風で知られるフランセの「ファゴットと弦楽のためのディヴェルティスマン」が取り上げられる。大宮臨太郎や福川伸陽ら実力充分のメンバーが、フランス音楽の香り、格調を満喫させてくれる。大宮臨太郎佐藤采香 ユーフォニアム・リサイタル全5回シリーズ ユーフォニアムの地平線 vol.1 ~ハープ~2/12(金)19:00 Hakuju Hall問 コンサートイマジン03-3235-3777http://www.concert.co.jpSACD『軒下ランプ』MYCL00004妙音舎¥3200+税1/22(金)発売

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