34夜クラシックVol.28 エール弦楽四重奏団若き4人の出発点となったクァルテットが、10年目の“深化”を聴かせる文:林 昌英2/19(金)19:30 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp 文京シビックホールが主催する「夜クラシック」は、19時30分開演、毎回人気アーティストがトークを交えながら室内楽の名曲をお届けするという内容で、仕事帰りでも慌てずに楽しめる好評のシリーズだ。 2月に登場するのは若手奏者たちによって結成された「エール弦楽四重奏団」。若手といっても、ヴァイオリン山根一仁、毛利文香、ヴィオラ田原綾子、チェロ上野通明…全員がコンクールで優勝や入賞、名門楽団との共演やリサイタルを重ねる、弦楽器ファンならずともその名を知るであろう名手ばかりだ。この団体名が初見という方は“人気者たちのイベント的なグループ?”と思われるかもしれないが、結成は彼らが桐朋学園の高校生だった2011年。山根は中学3年で日本音楽コンクールを制覇していたものの、言ってみれば全員がまだ“何者でもなかった”10代での結成だったのである。いまや多忙を極める4人だが、彼らの立ち戻る“居場所”として、大切に継続してアンサンブルを深め続けている。 この日聴かせるのはドビュッシーとシューベルト「死と乙女」、弦楽四重奏曲の代表的名作2曲。四重奏団としてのすべてが問われる演目だが、「エール」であれば、室内楽としての一体感と各自の際立つ個性が両立する、無二の演奏を作り上げるに違いない。 団体名の「エール」とはフランス語で「翼」とのこと。その名の通りに大きく羽ばたき続ける4人が、結成10年目となる“居場所”に戻ったこの日、どんなパフォーマンスを見せるのか、大いに期待が膨らむ。左より:山根一仁、田原綾子、毛利文香、上野通明 ©Hideki Shiozawaクリスティアン・アルミンク(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団思う心のコンサート名匠と作り上げる、希望に満ちたステージ文:笹田和人3/6(土)16:00 東海市芸術劇場問 東海市芸術劇場0562-38-7030 https://www.tokai-arts.jp 2021年3月で発生から10年を迎える東日本大震災に思いを寄せ、コロナ禍に苦しむ今こそ、いかに“音楽”が人々の心を救い、明るい未来を創るかを示したい。熱い気持ちを中部エリアから発信しようと、東海市芸術劇場が開く「思う心のコンサート」。クリスティアン・アルミンク指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団が思いを調べへと紡ぐ。 「私たちの心象に、未だ影を落とす東日本大震災。だが、未来はモノクロではなく、鮮やかに彩られるべき。そして、コロナ禍にある今も、“音楽”がいかに必要かを体感しました」と同劇場の安江正也・館長兼芸術総監督。「これは“忘れない”と同時に、“前に進む”ポジティブなコンサートです」と意図を語る。 この思いを音楽にするのが、ウィーン出身でルツェルン歌劇場などのシェフを歴任、我が国でも人気の高い指揮者であるアルミンクに率いられた新日本フィル。03年~13年まで同楽団の音楽監督を務めた名匠との、久々の共演に注目だ。 ステージは、まず、マーラーの交響曲第5番から第4楽章「アダージェット」で幕開け。弦楽合奏とハープによる、愛と癒しに満ちたサウンドで心を包み込む。 そして、ソロ・コンサートマスター崔文洙(チェ・ムンス)の独奏で、名旋律と技巧、そして喜びに満ち溢れたブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏。メインには、やはりブラームスの交響曲第1番を据え、苦悩からまばゆい光へと向かってゆく楽想で、“明るい未来”を描き出す。 また、開演15分前からのプレコンサートには、東海市子どものオーケストラが登場。アルミンク指揮で、エルガー「威風堂々」第1番を披露する。新日本フィルハーモニー交響楽団 ©三浦興一クリスティアン・アルミンク ©大杉隼平
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