32鈴木秀美(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団今こそ耳を傾けたい楽聖の迫真の響き文:柴田克彦定期演奏会 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉第38回3/26(金)、3/27(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 以前、ある専門家が「ベートーヴェンの本当の生誕250年は、2020年12月16日(有力視される誕生日)から21年12月15日までの一年なんだよ」と言っていた。2020年が不完全なベートーヴェン・イヤーだっただけに、この考えは格好の仕切り直しになるのではないだろうか。そんな真の(?)記念イヤーの3月に新日本フィルの定期演奏会「ルビー」で披露されるのが、ほかならぬベートーヴェンの三重協奏曲と交響曲第5番「運命」である。 指揮は鈴木秀美。チェロ奏者、指揮者として古楽畑で活躍し、近年は各地のモダン・オケに招かれると同時に山形交響楽団の首席客演指揮者も務める名匠だ。古楽に造詣の深い彼が今回いかなるベートーヴェンを聴かせるか? がまずは注目点。さらには、約3年前に脳梗塞で倒れた鈴木が、不安の中で復帰した際の演目が「運命」だったというから、ベートーヴェンの力や精神をよりリアルに捉えた、他とはひと味異なる名演が期待されるし、苦悩の現況の中で彼が振る「運命」がどう響くのか? 我々は心して耳を傾けたい。 三重協奏曲のソリストは、ソロ・コンサートマスターの崔文洙(チェ・ムンス)、首席チェロ奏者の長谷川彰子に、ハンガリーに拠点を置く崔仁洙(チェ・インス/文洙の兄)のピアノが加わった、同曲で重要な好バランスの布陣。彼らの妙技に鈴木のリードが相まって、こちらも新鮮かつ密度の濃い演奏が展開されるに違いない。 鈴木秀美指揮の新日本フィルといえば、17年6月のハイドン「天地創造」の生気に富んだ快演を思い出す。今回はそれと同様、いやそれ以上に迫真的な音楽が待っている。崔 文洙4館連携 若手アーティスト支援 アフタヌーン・コンサートホールから育った俊英たちが揃うアクティブなステージ文:山田治生2/28(日)14:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 東京文化会館は、都内の文化施設と連携し、若いアーティストの活動を支援する「東京ネットワーク計画」を実施しているが、それらの文化施設(ホール)とともに「アフタヌーン・コンサート」も開催している。今回は、東京芸術劇場の芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミーよりサクソフォン四重奏(足立雄大、日下雅央、金野龍篤、崔師碩)、トリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホールのアウトリーチセミナーより弦楽四重奏(吉野駿、松谷萌江、鶴友見、梶原葉子)、サントリーホール オペラ・アカデミーよりソプラノの木和田絢香と小寺彩音、サントリーホール室内楽アカデミーよりレグルス・クァルテット、そして、東京文化会館の東京音楽コンクール入賞者よりピアノ三重奏が出演する。 なかでも注目はレグルス・クァルテットのバルトーク弦楽四重奏曲第3番。レグルス・クァルテットは、第1ヴァイオリンの吉江美桜が日本音楽コンクールと東京音楽コンクールで第3位入賞、第2ヴァイオリンの東條太河が日本音楽コンクール入選、チェロの矢部優典が日本音楽コンクール第2位入賞。ヴィオラの山本周も2017年から東京・春・音楽祭で活躍するなど、新進気鋭の名手揃いの団体である。東京音楽コンクール入賞者のピアノ三重奏では、オーボエの篠原拓也、ファゴットの鈴木一成、ピアノの居福健太郎が出演。フランセの三重奏曲が楽しみだ。東京を代表する4つのホールによる特色ある若手育成プログラムの成果を一度に聴く絶好の機会である。レグルス・クァルテット長谷川彰子崔 仁洙鈴木秀美 ©K.Miura篠原拓也鈴木一成居福健太郎
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