26岡本侑也(チェロ)俊才が渾身で挑む驚嘆の無伴奏プログラム文:柴田克彦高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズ vol.32/21(日)13:30 高崎芸術劇場 音楽ホール問 高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900 http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/岡本侑也(チェロ) —無伴奏—2/28(日)15:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com 注目のチェリスト、岡本侑也が無伴奏リサイタルを行う。2017年エリザベート王妃国際音楽コンクールの第2位入賞で脚光を浴びた彼は、第一線で演奏活動を展開しつつ、ミュンヘン音楽大学でさらなる研鑽を積んでいる。すべての音を完璧に奏でながら音楽の持つ凄みを表出するその演奏は、技巧・表現力ともに抜群。特に訴求力の強さは、精鋭居並ぶ若手チェロ奏者の中でもひと際光っている。ゆえにそれが全面に出される無伴奏公演を見逃すことはできない。 プログラムがまた凄い。まずトッパンホールの公演。バッハの無伴奏組曲の中でもシリアスな難曲=第5番に、タイプが違いながらも最高度の技巧と繊細な表現力や巧みな構成力を求められるヒンデミット、デュティユー、カサド、クラムの作品が続く。そしてトッパンホールが「ジャン=ギアン・ケラスのためのめちゃくちゃ難しい曲」との希望で委嘱した超絶技巧作品、藤倉大の「osm」。岡本は19年に当ホールで初演者ケラスをも凌ぐ迫真的名演を展開しており、ここは一層の深化に期待が集まる。しかも今回は、要所で彼を後押ししてきた“弦のトッパン”における初の本格的リサイタル。渾身の凄演の予感が濃厚に漂う。 また初リサイタルとなる高崎芸術劇場では、バッハ、ヒンデミット、デュティユー、クラムの作品に加えて、黛敏郎とソッリマの定番曲が披露される。なかでも、トッパンホールでも過去に演奏し、緻密にして大胆な表現で驚嘆させた黛の「BUNRAKU」は必聴だし、この2曲によってプログラムの普遍性が増している点も魅力となる。 いずれも俊才の真価をフルに体感できる刮目すべき公演だ。©Shigeto Imura井上道義(指揮) 東京交響楽団新時代を行く井上道義の極めつけショスタコ「第6番」文:江藤光紀第688回 定期演奏会 3/27(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp 最近、井上道義が気になる。2014年には大病を患うものの完全克服、70代半ばというのに白鳥の舞のような指揮姿は軽やかさを増した。コロナ禍にあってもひときわ強烈なメッセージを発し、今もなお数々の話題を提供している。 3月の東響定期には、そんな演奏も人柄も超個性的な、ミッキーこと井上が登場する。曲はライフワークとして取り組んでいるショスタコーヴィチの交響曲第6番だ。恐怖政治が吹き荒れるなか、ソ連共産党機関紙から前衛性を批判されたことへの応答として書かれた第5番に続く作品で、鬱屈とした第1楽章にスケルツォ風の軽快な第2楽章、そしてバカ騒ぎのような賑やかさで終わる行進曲調のロンドが続く。交響曲の伝統に忠実な「第5」に対し3楽章しかなく、重々しい開始楽章には不釣り合いな後続楽章の軽さ・明るさには、この作曲家特有の風刺や皮肉を読み取ることができるだろう。そうした“作品の含み”を、ミッキーはグロテスクなまでに強調してくるのではないか。 前半にはアルゼンチン出身のネルソン・ゲルナーがベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を披露。ショパンやドビュッシーなどを得意としていた印象があるが、このところ継続的に来日して、さまざまなレパートリーを通じ才能の広がりが知られるようになってきた。ベートーヴェンは「ハンマークラヴィーア」を収録したディスクを発表しているが、色彩的な音響演出とロマンティックに揺れる歌い回しでユニークに仕上がっている。協奏曲ではどうだろうか? 個性派どうしの共演に大注目だ。ネルソン・ゲルナー ©Marco Borggreve井上道義 ©Yuriko Takagi
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