eぶらあぼ 2021.2月号
111/165

108SACDCDCDテレマン:12のファンタジー/佐藤俊介ラヴェル コダーイ ラフマニノフ/西江辰郎&富岡廉太郎&岡田将ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番&第2番 他/成田寛&上野真シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、森の情景/毛もう翔しょう宇うテレマン:12のファンタジー(無伴奏ヴァイオリンのための12の幻想曲)佐藤俊介(ヴァイオリン)ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調/コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲/ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲第1番「悲しみの三重奏曲」西江辰郎(ヴァイオリン)富岡廉太郎(チェロ)岡田将(ピアノ)ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番・第2番/ヨアヒム:ヘブライの旋律成田寛(ヴィオラ)上野真(フォルテピアノ)シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、森の情景毛翔宇(ピアノ)ナミ・レコードWWCC-7936 ¥2700+税オクタヴィア・レコードOVCL-00744 ¥3200+税妙音舎MYCL-00002 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9210 ¥2800+税バロックヴァイオリンの名手である一方、モダン楽器も弾きこなし、オランダ・バッハ協会の芸術監督としても活躍する佐藤俊介。2012年に限定リリースされたテレマンの無伴奏作品『12のファンタジー』の録音が、熱い要望を受けて再プレスされた。1735年以降に出版された同作は、バッハの一連の無伴奏作品に比べ、楽譜の上ではシンプル。しかし、書き込まれていない分、“行間”の和声感やフレーズの流れを的確に捉えなければ、音楽として成立し得ない難しさを孕む。佐藤は少し速めのテンポ設定で推進力を保つと同時に、彫りの深い表現と自然な収縮で、佳品へ瑞々しい生命を宿らせている。(寺西 肇)新日本フィルのコンサートマスター・西江辰郎、読響の首席チェロ奏者・富岡廉太郎、リスト国際ピアノコンクールで日本人初優勝後、内外で活躍する岡田将という実力者揃いのトリオによる初録音。異なるテイストの近代作品─しかも二重奏曲を含む─が3曲連なる変化に富んだ内容だ。岡田の雄弁なピアノと弦楽器2人のしなやかなフレージングが佳き相乗効果を生んだラヴェル、緊張感と親密さが共生したコダーイ、哀愁のロマンが一体で紡がれたラフマニノフと、3曲三様に魅力充分。所々で長めにとられたトラック間の“空き”を含めた「1つのコンサートのような」構成もまた愉しい。(柴田克彦)山形交響楽団の契約首席奏者を務める傍ら、バロックのフィールドでも活躍するヴィオラ奏者・成田寛のソロアルバム。ガット弦使用のためかその音色は滑らか一辺倒ではなく独特の物質的なきめと多様な音色の変化を感じさせ、これがふるいつきたくなるような魅力に富む。表現は親密で極めて抑制されているが、これを起伏に欠けると捉えるのは早計だ。非常に考え抜かれた清新なフレージングは、初めて楽曲に触れるかのような新味を聴き手に味わわせる。上野真のフォルテピアノもヴィオラと完全に一体化していて秀逸、ブラームスの醍醐味ここにあり。併録のヨアヒム作品も佳作。(藤原 聡)北京出身、アメリカや日本で活動を続ける毛翔宇は、知性と抒情性の光るピアニスト。本作はシューマンの若き日の作品「ダヴィッド同盟舞曲集」と、約10年後の所産である「森の情景」を収めている。毛翔宇のどこまでも冷静でリリカルな音楽作りが、静と動、明と暗のコントラストを立体的なタッチで描き分け、シューマンの濃密なロマン的表現をすっきりと、かつ生き生きと伝える。「ダヴィッド同盟舞曲集」における瞬間的に激昂するような表現も勢いに任せず、深い呼吸感で彩る。後者の第7曲「予言の鳥」などは、ぞっとするほど美しく透明感のある響きで、伸びやかに歌う。(飯田有抄)CD

元のページ  ../index.html#111

このブックを見る