eぶらあぼ 2021.2月号
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104CD+DVDCDCDTravelogue/宮田大&大萩康司高崎芸術劇場 大友直人Presents T-Shotシリーズ vol.1 荒井里桜 IN CONCERTリスト:巡礼の年 第1年「スイス」/三舩優子シューベルト&ショスタコーヴィチ/トリオ・ヴェントゥスルグラン(角田隆太編):キャラバンの到着/ニャタリ:チェロとギターのためのソナタ/ショパン(大萩康司編):チェロ・ソナタより第3楽章/サティ(大萩/宮田大編):ジュ・トゥ・ヴ/ピアソラ:ブエノスアイレスの冬(角田編) 他宮田大(チェロ)大萩康司(ギター)エルガー:愛の挨拶/クライスラー:愛の悲しみ/ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ/フォーレ:夢のあとに/フランク:ヴァイオリン・ソナタ/フバイ:カルメンによる華麗な幻想曲/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 他荒井里桜(ヴァイオリン)日下知奈(ピアノ)大友直人(指揮) 群馬交響楽団リスト:巡礼の年 第1年「スイス」三舩優子(ピアノ)シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番/ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番トリオ・ヴェントゥス【北端祥人(ピアノ) 廣瀬心香(ヴァイオリン) 鈴木皓矢(チェロ)】日本コロムビアCOCQ-85518 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9220 ¥3300+税妙音舎MYCL-00001 ¥3200+税日本アコースティックレコーズNARD-5074 ¥2800+税チェロとギター。ありそうで、なかなか出会わぬ取り合わせ。その愉悦と可能性の広がりを、名手たちが教えてくれる。5年前に言葉を交わし、意気投合したという宮田大と大萩康司の初共演盤。ある時は情熱的に、またある時はクールに。2人の対話は、フレーズごとに色彩を変え、しなやかな収縮を伴い、まるで絵本のページをめくるかのよう。パリが香る楽曲が枠組みに据えられ、同地で学んだピアソラとともに海を渡り、収録曲中で唯一、この編成のために書かれたオリジナル作品である、ブラジルの作曲家ニャタリのソナタへ。タイトルの通り、聴く者を“対話による旅”へと誘う。(笹田和人)芸術監督であるマエストロ大友直人が才能溢れる若手演奏家を“音と映像”で紹介する、上信越・北関東最大級の殿堂、高崎芸術劇場の「T-Shotシリーズ」第1弾。ヴァイオリン荒井里桜の清楚な音色をいかした「愛の挨拶」や「愛の悲しみ」「夢のあとに」などの小品とフランクやドビュッシーのヴィオリン・ソナタを中心としたラインナップ。サラサーテやワックスマンと違い「運命のテーマ」で幕開けするフバイ版の「カルメン幻想曲」も秀逸。DVDにはドビュッシーのソナタ第1楽章に加えてメイキング映像も満載。群馬交響楽団とのシベリウスのヴァイオリン協奏曲全曲収録も嬉しい。(東端哲也)デビュー30周年を迎えた三舩優子、8年ぶりのソロアルバム。三舩にとってリストは子どもの頃から大切にしてきた作曲家だというが、実際、アルバムに収められた作品を慈しむような深い音色から、その想いが伝わってくる。荘厳な輝きを放つ鐘を思わせる音で幕をあける「ウィリアム・テルの聖堂」、起伏に富みつつもおおらかな音楽の運びが天上に誘う「オーベルマンの谷」、孤独な人間の息遣いのようなものを感じる「郷愁」。巡礼の年 第1年「スイス」全曲を通じ、若き日の華やかな活動のために誤解されがちなリストの本質的な部分、光と闇をしっかりと見せてくれる。(高坂はる香)「風」を意味するヴェントゥスを団体名に掲げた3人はいずれもベルリンで学んだ若者たち。演奏は躍動感や熱量にあふれるものだが、その自然なアンサンブルや呼吸がどこか風のような新鮮さを帯びているのは偶然でないかもしれない。つま先立ちのバレリーナのように正確でリズミカルなスタッカート、精妙な転調の中を泳ぐように歌われるメロディーが、シューベルトのミューズに息吹を与える。ショスタコーヴィチのトリオは異世界から降りてくるように始まり、エネルギッシュなスケルツォを経て、ひたひたとした慟哭から道化師風の諧謔へと鮮やかにつなぐ。作品のドラマがスマートに描出された。(江藤光紀)SACD

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