eぶらあぼ 2021.2月号
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102CDCD肖像/堤剛&土田英介ヴィラ=ロボス:交響曲全集/カラブチェフスキー&サンパウロ響ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 他/岡田博美VIOLINable ディスカバリー vol.6/西本幸弘松村禎三:肖像/湯浅譲二:内触覚的宇宙Ⅳ/一柳慧:コズミック・ハーモニー、限りなき湧水(ピアノ独奏)/武満徹:オリオン/三善晃:C6H/細川俊夫:線Ⅱ/新実徳英:横豎/黛敏郎:BUNRAKU堤剛(チェロ)土田英介(ピアノ)ヴィラ=ロボス:交響曲第1番~第4番、第6番~第12番、バレエ音楽「ウイラプルー」、マンドゥ=サラライサーク・カラブチェフスキー(指揮)レオナルド・ネイバ(バリトン)サウロ・ジャバン(バス)サンパウロ交響楽団サンパウロ交響合唱団&児童合唱団ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲/シューマン:子供の情景、クライスレリアーナ岡田博美(ピアノ)ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第6番/リムスキー=コルサコフ(クライスラー編):「シェエラザード」より〈東洋の踊り〉〈アラビアの歌〉/ストラヴィンスキー(ドゥシュキン編):イタリア組曲/プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番西本幸弘(ヴァイオリン)北端祥人(ピアノ)マイスター・ミュージックMM-4084-85(2枚組) ¥4000+税ナクソス・ジャパンNYCX-10179(6枚組) ¥5000+税収録:2008年11月&2013年11月&2019年11月、東京文化会館(小)(ライブ)カメラータ・トウキョウCMCD-28376 ¥2800+税収録:2019年12月、仙台市宮城野区文化センターPaToNaホール(ライブ)フォンテックFOCD9841 ¥2700+税60年以上にわたりチェロ界、さらには楽壇の第一線で活躍してきた堤剛。今や世界的なレパートリーとなった黛敏郎「BUNRAKU」(本盤所収)をはじめ、邦人作品も数限りなく手がけている。そして今回、戦後の大作曲家たちとのコラボレーションの軌跡をたどる演奏が、ディスクとなって私たちに届けられた。どっしりと構えたところから正確なテクニックで核心へと切り込んでいくダイナミズムは堤の独壇場。スケールの大きな楽曲把握によって、各曲が宇宙的な広がりのもとに描き出される。歴史的ドキュメントと言うにとどまらず、精力的な活動は今なお倦むところを知らない。(江藤光紀)ブラジルの大作曲家ヴィラ=ロボスは、その芸術については未だ多くのことが知られていない。その象徴的な存在が、異才の迸るアイディアと情熱が古典的な形式に押し込められたような、ユニークな12曲の交響曲であろう(5番は楽譜消失のため欠番)。母国のマエストロと名門楽団による全集は、楽曲への共感と演奏の熱気がすばらしく、高い完成度でその全容を明らかにしている。各曲について詳述する余裕はないが、第一次大戦終結後の作で古典性と独創性を兼備して聴きやすい3、4番、シリアスで交響的な8、9番、合唱付きの10番と「マンドゥ=サララ」の高揚感が特に印象深い。(林 昌英)楽曲の構造を隅々まで読み解き、圧倒的な技巧によってそれらを美しい芸術作品として聴き手に届けてくれるピアニストの岡田博美。幅広いレパートリーを誇る彼だが、今回取り組んだのはドイツ・ロマン派を代表するプログラム。ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」ではその超絶技巧を存分に発揮しつつ、楽曲全体を見事にまとめあげ、比類なき芸術作品として聴かせてくれた。シューマンの「子供の情景」では彼の持ち味である美音をいかんなく発揮。繊細な歌が紡がれており、最後を飾る「クライスレリアーナ」でも、その歌心とともに岡田ならではの明快な構築性が光る。(長井進之介)西本幸弘のシリーズ第6弾はロシアがテーマ。西本のヴァイオリンは、清潔なイントネーションと質の高い美音で、一聴して引き込まれる魅力がある。ストラヴィンスキー「イタリア組曲」の冒頭がまさにそう。たゆたうリズムにほのかな哀感を滲ませるセレナータ、ぶつける音でも美感を失わないタランテラ、上品な佇まいのガヴォット、変化に富んでノリのよいフィナーレまで、充実した出来栄えだ。プロコフィエフのソナタ第2番冒頭楽章は、印象的な主題が何度も現れるが、そのつど微細に変化して、まるで万華鏡をみているかのよう。ベートーヴェンは前半2楽章の伸びやかな歌が美しい。(横原千史)CDCD

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