eぶらあぼ 2021.2月号
103/165

100工程と手巻きの巻線づくり。深みのある響きを支える曲練支柱、さらには、コンサートグランドピアノ『CFX』と同様の響板と響棒設計構造の採用など、ヤマハの最新技術が存分に駆使され、演奏者の思い描くイメージに充分に応えることができる高度な表現力を実現している。両サイドに穴を開けることで楽音を演奏者に直接届ける譜面台のデザインも特徴の一つだ。 昨年12月15日に開かれた新製品記者発表会では、第12回東京音楽コンクールで優勝した若手ピアニスト・梅田智也が登場し、『C3X』でシューマン「アラベスク」やショパン「夜想曲 嬰ハ短調」ほかを披露。演奏後「ピアニストが大切にしたい弱音の繊細なニュアンスと音の減衰が出せる。タッチなどアクションのレスポンスもよく、低音でのフォルティッシモの音量と力強さも素晴らしい」と感想を述べた。ヤマハ株式会社https://jp.yamaha.com■「スタインウェイ&サンズ東京」が青山 に移転オープン スタインウェイ・ジャパン株式会社が、国内唯一のスタインウェイ直営店「スタインウェイ&サンズ東京」を青山の大規模複合施設「ののあおやま」内に移転し、1月8日にオープン。2017年5月の開店以来、湾岸エリアの天王洲アイルに店舗を構えていたが、アクセスの良い都心へと拠点を移した。 新店舗では、直営店でのみ見ることができる特別モデルをはじめ、スタインウェイピアノ各種を展示。これまで同様多くのモデルの試弾もできる。また、小規模のコンサートホールが設置され、さまざまなイベントの開催も予定されている。 そのほか、店舗内で展示中のピアノやハイレゾリューション自動演奏ピアノ「SPIRIO」などの音色をスタインウェイ・ジャパンのYouTubeチャンネルにて紹介。スタッフによる講座のライブ配信も計画されている。今後は、コロナ禍の影響によるライフスタイルの変化にも対応し、自宅での最高級のピアノの楽しみ方を青山から発信していく。スタインウェイ・ジャパン株式会社https://www.steinway.co.jp■訃報:イヴリー・ギトリス イスラエル出身でパリ在住のヴァイオリニスト、イヴリー・ギトリスが2020年12月24日、パリで死去した。98歳。 1922年イスラエルのハイファ生まれ。両親はロシア系ユダヤ人。早くから才能を認められ、パリ国立高等音楽院に留学、わずか12歳で卒業。その後、エネスコ、ティボー、フレッシュら伝説の名手のもとで研鑽を積んだ。51年のロン=ティボー国際コンクール入賞を機に本格的な活動を開始。以来、世界の第一線で演奏を続けた。19世紀の様式、音楽観を伝える希少な存在で、“ギトリス・トーン”とも呼ばれる独特の音色、個性的な演奏スタイルは人気を博した。中東和平に尽力、長年ユネスコ親善大使としても活躍した。初来日は1980年。その後、「日本は第二の故郷」と公言し、2017年まで、ほぼ毎年来日。11年の東日本大震災では、外来演奏家の来日中止が相次ぐなか、急遽単身で日本を訪れて、仙台、石巻などの避難所や学校を廻って演奏、被災者を励ました。■訃報:フー・ツォン ピアニストのフー・ツォン(傅聡)が2020年12月28日、新型コロナウイルス感染症のためロンドンで死去した。86歳。 1934年上海生まれ。ワルシャワ音楽院に留学し、55年の第5回ショパン国際ピアノコンクールにアジア人として初めて入賞(第3位)。その後はロンドンを拠点に活躍。マルタ・アルゲリッチとは親交が深く、別府アルゲリッチ音楽祭にも98年の第1回からたびたび出演した。 ショパンのほか、スカルラッティ、モーツァルト、ドビュッシーなど録音も多く、若き日に文化大革命の厳しい時代を生き抜いた音楽家の人生を映し出すかのように、時に激しい感情の起伏を顕にするその演奏は、世界的に高い評価を受けた。文革の政治的混乱のなか、著名なフランス文学の翻訳家だった父と母が、66年に自殺するという悲劇にも見舞われた。ヤマハ グランドピアノ『C3X espressivo』梅田智也©堀 衛

元のページ  ../index.html#103

このブックを見る