eぶらあぼ 2021.1月号
40/169

37クァルテット・ウィークエンド 2020-2021 エルデーディ弦楽四重奏団~ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年Ⅲ深化を続けるカルテットの妙味溢れるプログラム文:江藤光紀2/14(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net 2019年に結成30周年を迎えたエルデーディ弦楽四重奏団は、15年から第一生命ホールのステージで、後期ベートーヴェンのカルテットに継続して取り組んだ。丹念に1曲ずつ作りこむ姿勢が、透明感あるしなやかな音楽を生む。清流のような演奏はこれまでに3枚のディスクに結実し、いずれも高い評価を受けてきた。 18年度からはこれに続くシリーズ「ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年」をスタートさせている。モーツァルトの3曲の「プロイセン王」のいずれかを中期ベートーヴェンと組み合わせ、近代の曲でアクセントをつけるというプログラミングもしゃれている。 2月14日はシリーズ第3回となり、ベートーヴェンから第10番「ハープ」を選んで、モーツァルトの第23番「プロイセン王第3番」と合わせた。「ハープ」は中期とはいっても「ラズモフスキー」の雄大な楽曲構成から、より軽やかで自由なスタイルを模索しはじめる、後期への橋渡しともいえる作品で、それだけに滋味にあふれている。一方、「プロイセン王」は啓蒙君主として知られたフリードリッヒ大王の甥で、自身もチェロをたしなんだフリードリッヒ・ヴィルヘルム2世の委嘱で書かれた。エルデーディの4人はこの2曲の間にどんな関係線を引いていくだろうか。 近代の作品としてストラヴィンスキーの「弦楽四重奏のための3つの小品」が挟まれる。原始主義のグロテスクな身振りをまとった音楽が、モーツァルトからベートーヴェンへという歴史の連続性に打ち込む強烈な楔も聴きどころ。左より:蒲生克郷、花崎淳生、桐山建志、花崎 薫 ©成澤 稔藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団英国音楽の美しき旋律と劇伴音楽の旗手による新作を存分に味わう文:林 昌英第340回 定期演奏会 2/13(土)14:00 サントリーホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp 夏の活動再開以来、毎回出色の成果をあげているのが東京シティ・フィルである。練られたプログラム(変更の際も凝った演目を用意)が目を引くし、何より演奏の充実が著しい。2月の定期には首席客演指揮者の藤岡幸夫が登場。夏の無観客配信ライブの熱演が話題になった組み合わせだが、聴衆のいる公演としては2019年末の第九以来の共演になり、しかも彼が特別な思い入れをもつ日本とイギリスの作品が並ぶ。その意気込みは推して知るべし。 注目は、菅野祐悟のサクソフォン協奏曲の世界初演。サックス界の第一人者であり続ける須川展也による委嘱作品だが、メロディックな菅野の楽曲は、「聴きやすさ」を大切にする藤岡との相性も抜群で、2つの交響曲の初演も担当したほど。この日は須川の練達の名技と藤岡の共感あふれるタクトで、誰もが新作の誕生を楽しめる時間になるはず。 美しいメロディといえば、イギリス音楽は外せない。今回選ばれたのはオーケストラの表現力が最大限に発揮される2曲で、最初はウォルトン「スピットファイア」より前奏曲とフーガ。元は映画用の楽曲で、とにかく「カッコイイ!」と唸らされること間違いなしの逸品だ。メインはホルスト「惑星」。言わずと知れた名組曲だが、有名な〈木星〉の名旋律を全体の中心として全7曲の大作をどう構築するか、そして英国音楽としてどう聴かせるのか。かつて同国で活躍した藤岡ならではの視点で新鮮に聴けるはず。華麗なサウンドと旋律美に満ちた3曲、ぜひともサントリーホールで堪能したい。須川展也藤岡幸夫 ©青柳 聡

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る