eぶらあぼ 2021.1月号
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30 ©武藤 章2022年デビュー20周年に向けて Vol.2 上原彩子 ピアノ・リサイタル1/13(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp上原彩子(ピアノ)二人の天才コンポーザー・ピアニストの佳品を味わう取材・文:高坂はる香Interview 上原彩子が、デビュー20周年の2022年に向けて行うリサイタルシリーズ。原点のロシア音楽ともう一人を組み合わせるというコンセプトのもと、Vol.2には、ラフマニノフとショパンを選んだ。ピアニストにとって重要な二人の作曲家だ。 まず決めた曲目は、ラフマニノフがショパンの「24の前奏曲」第20番からテーマをとった「ショパンの主題による変奏曲」だったという。 「ラフマニノフの大きな曲はほとんど弾いていますが、これだけ取り組んでいなかったのです。もともと、ラフマニノフに合わせるならショパンしかいないと思っていましたが、やはり原曲も聴いていただくほうがおもしろいだろうと、『24の前奏曲』を前半に置きました」 ラフマニノフの変奏曲からは、ショパンに対する「相当なリスペクトを感じる」という。 「ハ短調の主題を、これでもかというほど深く掘り下げています。あれだけ悲劇的に捉えたうえで、変奏を通じて歓喜に押し上げるところに、真摯な姿勢も感じます。ただ、ショパンの主題はあくまで素材として使っていて、音楽はラフマニノフそのもの。彼が弾くショパンの録音も、やはり音色はどこまでもラフマニノフで、おもしろいですよね。自作でも、絶対にやりすぎることなくシンプルに弾きます。とても趣味のいい人だったのでしょう。ショパン自身の録音は残っていませんが、その感性は共通していると思います」 上原はもともとショパンに苦手意識があった。それには、子どもの頃、恩師である故ヴェラ・ゴルノスタエヴァから言われた言葉が影響しているそうだ。 「先生はショパンが得意でたくさん弾いてくださり、そこから聴きとったことはすべて頭の中に残っています。でも私が弾くと、それはちょっと違うわねといつもおっしゃって。当時はショパンならではの洗練が表現できていなかったのでしょう…田舎育ちですから(笑)」 おかげで今もラフマニノフに比べ“遠いところにいる”ショパンだが、コロナ禍の自粛期間には、改めて新しい曲に取り組んだ。「ショパンを弾き込むことで、鍵盤に対する接し方やテクニックを盗みたい」と話す。 最後に、不安なニュースが多い今、公演を通じて届けたいことを聞いた。 「ショパンの前奏曲は、春の明るさのなかで始まり、影がどんどん濃くなって、悲劇の鐘で終わります。しかしどん底に落ちた音楽が、ラフマニノフの手で歓喜に昇華される。そんな音楽の流れを共に味わっていただけたら嬉しいです」第504回日経ミューズサロン 辻 彩奈 ヴァイオリン・リサイタル新しい年のはじめに、次代を担う才媛が登場文:林 昌英 新年早々、日経ミューズサロンで辻彩奈のヴァイオリンの音色に浸れる。2016年、10代にしてモントリオール国際音楽コンクール優勝を成し遂げ、すでに内外の名門楽団との共演を重ねる辻は、安定した高い技巧と没入するような濃密な表現を併せもち、若手奏者の代表格的な存在として活躍する俊才だ。 今回は、幅広いレパートリーをもつピアノの名人、佐藤卓史とともに、ベートーヴェンのソナタ第5番「春」と第8番、ショーソン「詩曲」にラヴェルの1/5(火)14:30 18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227https://www.nikkei-hall.com©Makoto Kamiya「ツィガーヌ」とソナタ第2番という、古典と近代フランスの名品5曲を聴かせる。いまの彼女の演奏でこそ聴きたい曲ばかりで、作品の新たな魅力も味わえそう。しかも、同日に昼と夜の2公演が行われることになり、都合にあわせて選べるのもうれしい。 また、アート&カルチャーのコンテンツを鑑賞して学べる有料配信サービス「日経アートアカデミア」において、1月下旬から当公演の配信が予定されている。ステージでもオンラインでも、辻のヴァイオリンを堪能できる好機となる。

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