eぶらあぼ 2021.1月号
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27横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ60森 麻季(ソプラノ) & 福井 敬(テノール) ゴールデン・デュオ・リサイタル煌めく声による“王道アリア・シャワー”を浴びる幸せ文:香原斗志2020.12/26(土)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 https://www.yokosuka-arts.or.jp 偉大な声のシャワーを浴びると問答無用に心地よい。そういう機会はしばらく遠ざかっていたが、やっと戻りつつある。最たるものの一つがこのリサイタルだろう。 ソプラノの森麻季とテノールの福井敬。日本を代表する2人の歌手については、もはや説明不要と思うが、念のために。森はバロックから現代作品まで、透明な美声をムラなく響かせ、華麗な技巧的歌唱も難なくこなす。内外での輝かしいキャリアは伊達ではなく、この秋もヘンデルのオペラ《リナルド》で、声の美しさと様式感が両立した圧倒的な印象を残したばかりだ。一方の福井は、リリックな役からドラマティックな役まで驚異的なレパートリーを誇り、この人抜きには、日本におけるオペラ上演は成立しないと言っても過言ではない。やはりこの秋の《トゥーランドット》カラフ役でも、大きな喝采をさらった。 そんな2人が歌うのが、まさに王道のアリアばかりなのだ。森が《ノルマ》から〈清らかな女神よ〉を歌えば、福井が《トスカ》から〈妙なる調和〉を。森が《ラ・ボエーム》のムゼッタのワルツを歌えば、福井は《トゥーランドット》から〈誰も寝てはならぬ〉。 名アリアこそ偉大な声で聴かなければ、「名アリア」たるゆえんが伝わらないものだ。その点において理想的なリサイタルだが、加えて、タイプの違うスター2人による思わぬ化学変化も期待できる。歌手の生理を知り尽くした山岸茂人のピアノも得て、幸福な2時間が約束されている。広上淳一(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団神童ヴァイオリニストも登場する圧巻のプログラム文:山田治生第629回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉1/30(土)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 新日本フィルの1月の定期演奏会に、まだ9歳のヴァイオリニストが独奏者として登場する。パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を弾く吉村妃鞠(ひまり)は2011年生まれの小学3年生。原田幸一郎、小栗まち絵、ザハール・ブロンらに師事し、これまでに、第12回アルテュール・グリュミオー国際ヴァイオリンコンクール カテゴリーA(10歳以下の部)、第26回アンドレア・ポスタッキーニ国際ヴァイオリンコンクール カテゴリーA(11歳以下の部)、第20回シェルクンチク国際音楽コンクール 弦楽器部門(14歳以下の部)のそれぞれで第1位を獲得。20年8月には小林研一郎指揮東京交響楽団と共演した。パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番は、すでにニコライ・ジャジューラ指揮キエフ国立フィル、ウラディーミル・スピヴァコフ指揮ロシア・ナショナル・フィル、イヴァン・ストルボフ指揮モスクワ・フィルとも共演している彼女の十八番というべきレパートリー。今回は、定期演奏会のソリストを務めるということで、ベストの条件で彼女の真価を聴くことができるに違いない。指揮は広上淳一。 演奏会では他に、スメタナの歌劇《売られた花嫁》序曲とドヴォルザークの交響曲第8番が演奏される。広上はこれまでもNHK交響楽団の定期公演などでドヴォルザークの交響曲第8番で歌心に満ちた演奏を繰り広げてきた。年末の「第九」に続いての共演となる新日本フィルとどんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみだ。吉村妃鞠 ©Hitoshi Iwakiri広上淳一 ©Masaaki Tomitori福井 敬森 麻季 ©Yuji Hori

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