eぶらあぼ 2021.1月号
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112CDCDCDチャイコフスキー:交響曲第5番 他/P.ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管武満徹ソングブック―コンプリート―/ショーロクラブ with ヴォーカリスタスエレガンス/中野真理ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第5番&第15番/ウェールズ弦楽四重奏団チャイコフスキー:交響曲第5番、幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団武満徹:翼(秋岡欧編)、めぐり逢い(笹子重治編)、死んだ男の残したものは(沢田穣治編)、○と△の歌(ショーロクラブ編) 他ショーロクラブ【秋岡欧(バンドリン) 笹子重治(ギター) 沢田穣治(コントラバス)】ヴォーカリスタス【アン・サリー おおたか静流 おおはた雄一 沢知恵 tamamix 畠山美由紀 松田美緒 松平敬 優河(以上ヴォーカル)】 谷川俊太郎(ヴォーカル)タファネル:アンダンテパストラールとスケルツェッティーノ/ゴーベール:ノクターンとアレグロスケルツァンド、バラード/カプレ:夢と小さなワルツ/ルーセル:笛吹き達/エネスコ:カンタービレとプレスト/カミュ:シャンソンとバディネリ/ガンヌ:アンダンテとスケルツォ 他中野真理(フルート)石橋尚子(ピアノ)ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番、同第15番ウェールズ弦楽四重奏団【﨑谷直人 三原久遠(以上ヴァイオリン) 横溝耕一(ヴィオラ) 富岡廉太郎(チェロ)】ナクソス・ジャパン/ALPHA CLASSICSNYCX-10175 ¥2700+税収録:2014年3月、東京文化会館(小)(ライブ) 他日本コロムビアCOCB-54314~315(2枚組) ¥3700+税ナミ・レコードWWCC-7934 ¥2500+税フォンテックFOCD9839 ¥2800+税P.ヤルヴィがチューリヒ・トーンハレ管の音楽監督就任直後に録音した、チャイコフスキー交響曲全集の第1弾。既存の表現パターンとは一線を画した、パーヴォの面目躍如たる一枚だ。交響曲第5番は、冒頭の「運命動機」からいつになく寂しげで意味深く、その後もあらゆるフレーズが息付きながら自然に高揚していく。第2楽章は陶酔的ながらも品性が保たれ、第3楽章は細部の動きが瑞々しく、第4楽章は爽快・明解にしてエキサイティング。「フランチェスカ・ダ・リミニ」も見通しの良い音楽がテンポ良く運ばれる。ノーブルで歌心に溢れた、刮目すべきチャイコフスキー!(柴田克彦)武満徹生誕90年の2020年、思いもかけぬ嬉しい贈り物だ。11年にリリースの名盤、ショーロクラブの『武満徹ソングブック』にライブ音源も含み新たに大幅な追加曲を加えて2枚組でリイシュー。2枚目の13曲が今回追加された曲たちであり、1枚目には参加していない畠山美由紀と優河の2人もここに加わる。これで武満のポップソングはすべて網羅されるという意味でも必聴だが、ここでの9人の「ヴォーカリスタス」の紡ぎ出す優しくて温かい歌、さらにはショーロクラブのセンシティヴな音の積み重ね方には改めて心を動かされる。ライブ音源での谷川俊太郎の参加も楽しい。(藤原 聡)ボストン大芸術学部などに学んだ中野真理は、数々の登竜門で実績を残し、ソリストとして活躍の一方、後進の指導にも取り組む。今回は、パリ音楽院での試験のために書かれた、フランス近代の佳品に対峙。曲ごとのみならず、同じ曲の中においても、繊細に移り変わる色彩感を、中野は余さず掬い取る。また、ぐっと謳い込む場面はもちろん、技巧的な場面にあっても、決して透明感ある美音がぶれることはない。そして、これらの作品に共通する、独特のエスプリを浮き彫りにしてゆく。フルートの特性を知り尽くす、共演の石橋尚子も見事。饒舌に過ぎぬ、絶妙の好サポートで魅せる。(笹田和人)桐朋学園出身、バーゼル音楽院にてライナー・シュミット(ハーゲン四重奏団)の下で研鑽を積んだ4人による、2017年よりスタートしたベートーヴェン弦楽四重奏曲・全曲録音シリーズの半ばとなる第四弾。今回は迷いなき古典的名曲の第5番イ長調と最高傑作である第15番イ短調という同主調2曲の組み合わせ。コロナ禍による緊急事態宣言がいったん解除され、感染第2波が迫りくる中での録音であったとか。それだけに第15番第3楽章の冒頭に、体調不良から回復した“楽聖”によって添えられた「病から癒えし者の神への聖なる感謝の歌」という言葉が真に迫るはず。(東端哲也)CD

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