eぶらあぼ 2021.1月号
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108CDCDCDダンツァ/新倉瞳小畠伊津子 ピアノ・リサイタル・ⅡDUO2/荘村清志&福田進一&鈴木大介&大萩康司ベートーヴェン ハンマークラヴィーア/小倉貴久子フォーレ:シシリエンヌ/チャイコフスキー:バレエ音楽「眠れる森の美女」より第6番ワルツ/サン=サーンス:死の舞踏/バルトーク:ルーマニア民俗舞曲/ポッパー:スペイン舞曲第2番セレナーデ、ハンガリアン・ラプソディ/アルベニス(クリストファーソン編):スペイン第2番タンゴ 他新倉瞳(チェロ)梅村百合(ピアノ)J.S.バッハ:コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(ピアノ編)/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番「告別」、エリーゼのために/J.S.バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番/モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 第3楽章「トルコ行進曲」小畠伊津子(ピアノ)レイモン:ミッドナイト・メモリーズ/ヴィヴァルディ:「2台のマンドリンのための協奏曲」より第2楽章/カステルヌオーヴォ=テデスコ:エレジー風フーガ/ピアソラ:「タンゴ組曲」より第2楽章/武満徹:不良少年(荘村清志&鈴木大介編)、どですかでん(鈴木編) 他荘村清志 福田進一 鈴木大介 大萩康司(以上ギター)ベートーヴェン:クラヴィーア・ソナタ第27番~第29番「ハンマークラヴィーア」小倉貴久子(フォルテピアノ)アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1060 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7935 ¥2500+税日本コロムビアCOCQ-85513 ¥3000+税コジマ録音ALCD-1201 ¥2800+税カメラータ・チューリッヒのソロ首席チェリストを務め、日欧で活躍する新倉瞳による、「踊り」をテーマとした小粋な名品集。幼少期から踊りにこだわってきたという彼女にとって、「舞曲」とは手先で弾くものではない。心も体も「踊りのグルーヴ」に乗りつつ、楽しくニュアンス豊かに、多国籍の作品群の魅力を描き分ける。節度あるノーブルな美音を保ちながら、ポッパー作品などでの技巧と熱気も十分。なにより楽曲の洋の東西を問わず、様式の違いをこえて通底するものにも気付かされて興味深い。「身体性」を見つめ直さざるを得なかった2020年夏の録音で、「舞曲」の本質を再発見する。(林 昌英)コロナ禍、ドイツでのコンサートが中止・延期となった小畠伊津子が、多くの「友情と応援」に思いを寄せて録音したアルバム。世界中の人々が共通の困難な文脈にある中、バッハ=ヘス「主よ、人の望みの喜びよ」は柔らかな慰めを与え、ベートーヴェンのソナタ「告別」は抑制の効いた表現に感情の豊かさを滲ませ、選曲にもメッセージ性が光る。バッハ=ブゾーニのシャコンヌは、オルガンのごとき荘厳な響きが圧巻。ショパンのソナタ第3番は、今の思いを強く噛みしめろとばかりに、終楽章のテンポをかなり落とし丁寧に聴かせることで、むしろ鬼気迫る見事な表現となっている。(飯田有抄)荘村清志と福田進一、ギター2人の巨匠の共演が大きな話題となった「DUO」(2015年)に続く第2弾。今回はこの2人に、鈴木大介と大萩康司という次世代の名手が加わり、互いに相手を替えつつ、ギターのためのオリジナルから新作、バロック、武満徹の映画音楽まで、多彩な佳品を弾き尽くす。とは言え、丁々発止の感覚は一切なく、時に熱っぽさは帯びるものの、穏やかな会話のよう。奏者による音の響かせ方の違いも、各々の口調の違いと言ったところか。聴く者に、極上の時間を提供する。ボーナス・トラックには、名手たちと合奏が愉しめる、カラオケ音源が収録されているのも嬉しい。(寺西 肇)フォルテピアノ奏者の小倉貴久子がベートーヴェンの記念年に録音したのは、後期クラヴィーアソナタの様式が確立された頃である、第27番、第28番、第29番のソナタ。使用された1845年製J.B.シュトライヒャーは、ベートーヴェンが信頼した製作者一族による楽器。フォルテピアノならではの音のバランス、トリルの音の質感や、それらを自在に操る小倉の音の粒立ちのおかげで、ベートーヴェンの音楽的な“攻め”の姿勢がくっきり耳に届く。ハーモニーの厚みの変化も新鮮。「ハンマークラヴィーア」のクールさは特に強いインパクトを残す。ベートーヴェンの脳内の耳が求めた音楽に迫る録音。(高坂はる香)SACD

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