eぶらあぼ 2021.1月号
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106CDCDベートーヴェン :交響曲第9番「合唱」/ノット&東響細川俊夫:パッサージュ、野平一郎:弦楽四重奏曲 第5番 他/アルディッティ弦楽四重奏団ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2020高橋アキ プレイズ エリック・サティ4ベートーヴェン :交響曲第9番「合唱」ジョナサン・ノット(指揮)ルイーズ・オルダー(ソプラノ) ステファニー・イラーニ(メゾソプラノ) サイモン・オニール(テノール) シェンヤン(バスバリトン) 東京交響楽団東響コーラスシャリーノ:Codex Purpureus Ⅱ野平一郎:弦楽四重奏曲第5番クセナキス:AKÉA細川俊夫:パッサージュ(通り路) 弦楽四重奏のためのリゲティ:弦楽四重奏曲第2番アルディッティ弦楽四重奏団野平一郎(ピアノ)ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より〈愛の音楽〉(ストコフスキー編)(抜粋)/ジャール:「ドクトル・ジバゴ」組曲/プッチーニ:歌劇《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉/J.シュトラウスⅡ:ワルツ「ウィーン気質」 他ワレリー・ゲルギエフ(指揮)ヨナス・カウフマン(テノール)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団サティ:梨の形をした3つの小品Ⅰ~Ⅶ、組み合わされた3つの小品Ⅰ~Ⅲ、風変わりな美女(真面目な幻想曲)Ⅰ~Ⅳ(以上4手連弾)、「子供の音楽集」より〈童話音楽の献立表Ⅰ~Ⅲ〉〈絵に描いたような子供らしさⅠ~Ⅲ〉 他高橋アキ(ピアノ/ナレーション)コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)収録:2019年12月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00740 ¥3200+税マイスター・ミュージックMM-4083 ¥3000+税収録:2020年9月、ウィーン(ライブ) 他ソニー・ミュージックエンタテインメントSICC-2160 ¥2600+税カメラータ・トウキョウCMCD-28375 ¥2800+税快進撃のノット=東響だが、この「第九」でもやってくれた。何より速いテンポに驚かされる。通常は70分以上かかるところを彼らは62分弱。冒頭楽章は速いテンポで前進駆動し、攻撃的に進める。結尾楽句の付点リズムもくっきり。ティンパニも効いている。常にインテンポというわけでなく、例えばスケルツォ再現部の弱音の推移でテンポを落とす。それによって前後の強音の両主題が一層際立つ。終楽章も速いテンポできびきびと立体的に造形する。行進曲では英雄が突き進むかのようだ。二重フーガでは一転、遅いテンポで対位法的な声部の絡みを明確に打ち出す。最後の頂点も圧倒的だ。(横原千史)現代音楽をアクロバティックな音の饗宴として聴かせてくれる点で、アルディッティ弦楽四重奏団ほどエキサイティングなグループはいない。星々の明滅のようなシャリーノ作品を影とするなら、野平作品では音は実存性を帯び激しい暴走を繰り返す。クセナキス作品ではさらに強固な存在の強度を示すが、細川作品では波動に変わる。リゲティ作品は1960年代前衛運動の総決算のような密度で進んでいく。作品ごとに変わる力点を的確に捉え、こともなげに実現していくところに、ベテランの貫禄がある。オープン間もない高崎芸術劇場で収録され、幅広いレンジにわたる音の動きが克明に捉えられている。(江藤光紀)ウィーン夏の風物詩「サマーナイト・コンサート」が、2020年も時期をずらして開催に至った。それぞれ多忙の象徴のようなゲルギエフとウィーン・フィルだが、活動制限の影響で逆に余裕ができたのか、例年以上に高精度で練り上げられた、濃厚な熱演が実現。「愛」をテーマとして、得意のオペラ楽曲ばかりか、初奏の「ドクトル・ジバゴ」まで同楽団独特の厚いハーモニーと多彩な美音が発揮され、圧巻の名演ぞろい。カウフマンも圧倒的な魅力とパワーで、特にカラフの“声の”イケメンぶりは尋常ではない。一聴すべきアルバムであり、困難をこえた貴重な記録のひとつである。 (林 昌英)ピアニストの高橋アキは、1975年に「サティ連続演奏会」を開き日本におけるサティ受容のきっかけを作りだした存在。88年には一度全集をリリースしたが、2013年からは改めてピアノ作品の録音に取り組んでいる。その第4弾にはアンサンブルピアニストとして評価の高いコスタンティーノ・カテーナとの共演による連弾作品をはじめ、「童話音楽の献立表」などのかわいらしい小品が収められている。これまでサティの作品にはどこか“冷たさ”を感じていたのだが、ファツィオリピアノを使用した、あたたかく色彩豊かな音色で描き出される本盤の演奏を聴くと、新たな一面が次々と見えてくる。(長井進之介)SACDCD

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