eぶらあぼ 2020.12月号
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40東京文化会館《響の森》Vol.47 ニューイヤーコンサート2021新年の幕開けには質実剛健なサウンドがふさわしい文:林 昌英2021.1/3(日)15:00 東京文化会館 問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 想定外の事態に見舞われた2020年を経て、新しい年には新しい希望を託したい。東京文化会館主催《響の森》シリーズの「ニューイヤーコンサート」は、年明け早々の1月3日に硬派な演目を並べる、毎年恒例の注目公演である。しかし今回ばかりは、新年を寿ぐにとどまらず、2021年に「これまで通りの公演が楽しめること」自体を占うような、例年とは違った意味合いも込められるだろう。 公演内容も大きな期待を抱かせてくれる。オーケストラは例年通り東京都交響楽団で、指揮者は我らが誇るドイツ音楽の巨匠、飯守泰次郎。彼が最も得意とするワーグナーとベートーヴェンという重厚な演目が用意されたことで、正月気分も吹き飛ばしてしまうような、雄大にして熱い演奏が展開されるのは間違いない。 前半は世界的なピアニスト、小川典子の独奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。小川は動画メッセージで、「2021年の幕開けにふさわしい、どんな困難にも負けない、必ず復活するというメッセージの強い、すばらしい協奏曲」と語る。作曲者生誕250年が明けた直後、屈指の名作でその思いを受け止めたい。後半は、ワーグナーの人気楽曲、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第1幕への前奏曲と《タンホイザー》序曲で、東京文化会館大ホールいっぱいに響きわたる、オーケストラの華やかな音色に包まれる。ドイツの巨人たちの名作を、質実剛健な名演で体感することで、新しい一年に向かう強いエネルギーをもらえるはずだ。八王子コミュニティオペラ ガラコンサート多彩な歌手陣と地域の人々の心意気が詰まったステージ文:笹田和人2021.1/9(土)15:00 いちょうホール問 八王子市学園都市文化ふれあい財団042-621-3005 http://www.hachiojibunka.or.jp 「創る」「演じる」「観る」喜びを、より多くの人と分かち合おうと、プロのアーティストや市民、学生、八王子市学園都市文化ふれあい財団が力を合わせ、毎年開いている手作りのステージ「南大沢コミュニティオペラ」。2020年3月にも公演を予定していたが、折しも深刻化したコロナ禍により中止に。しかし、「せっかくの灯を絶やしてはならない」と、スタイルを変え、名旋律を詰め込んだ贅沢な「八王子コミュニティオペラ ガラコンサート」を新春に開く。 この企画は、日本を代表する名テノールで、藤原歌劇団や新国立劇場などで活躍する村上敏明を芸術監督に迎えて、14年にスタート。合唱や裏方には市民が参加し、衣裳やメイク、映像制作に学生たちが協力するなど、地域に根付いた活動を展開し、ヴェルディ《椿姫》などイタリア作品をはじめ、ウィーンのオペレッタやモーツァルト《魔笛》など、多彩な作品の上演を実現させてきた。 今回、ステージには村上をはじめ、メゾソプラノの二瓶純子ら総勢11人の名歌手たちが集結。音楽監督を務める江澤隆行らのピアノを交えて、まずは3月に上演予定だったビゼー《カルメン》からハバネラ〈恋は野の鳥〉や闘牛士の歌〈諸君らの乾杯を〉など名アリアや二重唱の聴きどころを披露。さらに、モーツァルトの2つの傑作オペラ《ドン・ジョヴァンニ》と《コジ・ファン・トゥッテ》の二・三重唱を。そして、チマローザやドニゼッティ、ヴェルディなど、イタリアの傑作からの豪奢な二~四重唱で締め括る。二瓶純子村上敏明小川典子 ©武藤 章飯守泰次郎 ©山岸 伸

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