eぶらあぼ 2020.12月号
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32トッパンホール ニューイヤーコンサート 2021新年を寿ぐ、選りすぐりの名手たちの華麗なる競演文:江藤光紀2021.1/12(火)19:00 トッパンホール 発売日調整中問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com アレッシオ・アレグリーニはホルン界では知る人ぞ知る名手だ。ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団首席やモーツァルト管弦楽団首席、ベルリン・フィル首席客演などを歴任し、現在はローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団、ルツェルン祝祭管弦楽団の首席として活躍している。オーケストラファンならきっとその名人芸をどこかで耳にしているはずだ。 今年5月のトッパンホールのリサイタルは中止になってしまったが、落胆したファンたちに朗報が届いた。年も改まった2021年のニューイヤーコンサートに登場するという。プログラムも大幅に変更、弦が加わってさらにゴージャスに! まずはケルビーニのホルン・ソナタ第2番とロッシーニ「狩のランデブー」。いずれもホルンの妙技全開で、後者は特殊奏法なども含み、アレグリーニのヴィルトゥオジティが炸裂する。ホルンはまたアンサンブルにあっても、サウンドを決定する中核となる。モーツァルトにはホルンを含む室内楽の名曲がたくさんあるが、「ピアノと木管のための五重奏曲」はなかでも自信作だったようで、才気煥発なやり取りが楽しめる。「七重奏曲」は全6楽章から成るベートーヴェン初期の大作で、ディヴェルティメント風の流れるような構成が初演当時大変人気になった。最近は指揮者としても活躍するアレグリーニのセンスが発揮されそうだ。競演はトッパンホールのプロデューサーの眼鏡にかなった日本の名手たち。 2021年は素晴らしい年となってほしい。そんな願いを込めてアレグリーニの角笛が新年を寿ぐ。アレッシオ・アレグリーニ ©Priska Kettererジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団2020年12月、「第九」は特別な体験となる文:飯尾洋一第九 202012/28(月)18:30、12/29(火)14:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp 今年の年末の「第九」は特別な体験になる。なにしろ目下のウイルス禍により、合唱団は活動が困難な時期にある。練習段階からの「密」を避けるために、年末恒例の「第九」を断念したアマチュア合唱団も多いことだろう。 東京交響楽団は今年の「第九」公演にあたり、人数と練習回数を減らして感染リスクを低減するため、アマチュア団体である東響コーラスに代わって新国立劇場合唱団を起用する。専門医の監修を受けて、最大限の感染予防対策が施されるという。今年はベートーヴェン生誕250年。ベートーヴェンが生まれたのは12月なので、このタイミングの「第九」ほど、記念の年を祝うにふさわしいコンサートはない。 そして、もうひとつの注目は出演者陣だ。指揮は音楽監督ジョナサン・ノット、独唱にジャクリン・ワーグナー(ソプラノ)、カトリオーナ・モリソン(メゾソプラノ)、クリスティアン・エルスナー(テノール)、リアン・リ(バスバリトン)といった国際色豊かな名が並ぶ。本稿執筆時点ではいまだ入国時の隔離措置等により大半のアーティストが来日を断念しているが、まもなく入国制限措置が徐々に緩和されるのではないかという期待が広がっている。その点でも、今年の「第九」は例年にない注目を浴びることになる。 舞台上にジョナサン・ノットが姿を現したら、客席はどんな反応をするだろうか。「ブラボー!」と叫ぶわけにはいかないが、空気が一変することはまちがいない。ジョナサン・ノット ©N.Ikegami

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