eぶらあぼ 2020.12月号
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30大友直人(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団王道プログラムで知る人気音楽家の表現者としての深まり文:柴田克彦定期演奏会 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉第37回2021.2/19(金)、2/20(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール 11/19(木)発売問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp ショパンのピアノ協奏曲第1番とチャイコフスキーの交響曲第5番…新日本フィルの2月の定期演奏会「ルビー」は、堂々たる王道プログラムだ。しかも指揮は大友直人、ピアノは牛田智大と人気アーティストが並ぶ。週末のマチネ公演なので、寛いだ気分で彼らが紡ぐ名曲に酔いしれれば充分ともいえるだろう。だが一歩踏み込めば、より深い楽しみが見えてくる。 大友は数々のポストを歴任してきた日本の中心的指揮者の一人。新日本フィルもデビュー直後から指揮し、昨年の「第九」など最近もたびたび客演して相性の良さを示している。2020年11月に続く定期演奏会登場も信頼の証し。まずは両者の熟成されたコンビネーションが聴きものとなる。また大友の特徴は緻密な構築と格調高い音楽。近年いっそう味わいを増した彼のノーブルな表現と濃密で情熱的なチャイコフスキーの5番とのマッチングが興味深く、曲の新たな魅力が創出されることへの期待も大きい。 12歳でユニバーサル ミュージックからCDデビューした俊才・牛田智大は、18年の浜松国際ピアノコンクールで第2位入賞。19年にはロシア・ナショナル管の現地公演に出演し、ワルシャワとブリュッセルでリサイタルを行うなど、世界水準の奏者に成長している。さらにショパンは、19年に『バラード第1番、24の前奏曲』のCDをリリースして以来、とりわけ傾注している作曲家。持ち味であるパッションを内包した抒情美に奥行きを加えた今の彼が弾く協奏曲にも多大な注目が集まる。 これは、名作を通して人気音楽家の“深まり”を知るコンサートでもある。明日を担う音楽家たち2020 ~新進芸術家海外研修制度の成果~若き逸材たちが集う協奏曲の夕べ文:長谷川京介12/7(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 日本オーケストラ連盟03-5610-7275 https://www.orchestra.or.jp コンサートの副題は「新進芸術家海外研修制度の成果」。この制度は文化庁が美術、音楽、舞踊、演劇、映画など、メディア芸術の各分野における新進芸術家が、海外で実践的な研修を受けられるよう援助するもので、これまでに3,500名もの芸術家を送り出している。ヴァイオリニストの諏訪内晶子もその一人である。 今回のコンサートに登場するのは、4名のアーティスト。それぞれの留学先は、ピアノの加藤大樹がミュンヘン、同じくピアノの石井楓子がバーゼル、コントラバスの菅沼希望がフランクフルト、ヴァイオリンの猶井悠樹がライプツィヒ。皆、すでに第一線で活躍している。 第7回東京音楽コンクール ピアノ部門第1位、第9回パデレフスキ国際ピアノコンクール第3位ほかの輝かしい入賞歴がある加藤は、シューマン「ピアノ協奏曲」を弾く。第82回日本音楽コンクール ピアノ部門を制した石井は、ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第1番」に挑む。新日本フィルの首席としても活躍している菅沼は、ボッテジーニ「コントラバス協奏曲第2番」を弾く。小澤征爾音楽塾でコンサートマスターを務め、現在NHK交響楽団第1ヴァイオリン奏者の猶井は、ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」を弾く。バックはいずれも高関健指揮の東京シティ・フィルが務める。 4人が留学で得た成果を披露するこのコンサートは、伸び盛りの若手演奏家の旬の演奏を聴くまたとない機会ともなるだろう。左より:加藤大樹/石井楓子/菅沼希望 ©New Japan Philharmonic/猶井悠樹牛田智大 ©Ariga Terasawa大友直人 ©Rowland Kirishima

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