eぶらあぼ 2020.12月号
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29日本フィルハーモニー交響楽団 第九特別演奏会2020ベートーヴェン・イヤーの記憶に残る「第九」公演文:山田治生飯森範親指揮12/19(土)17:00 横浜みなとみらいホール 12/20(日)14:00 サントリーホール小林研一郎指揮12/22(火)19:00 サントリーホール 12/23(水)19:00 横浜みなとみらいホール12/26(土)、12/27(日)各日14:00 東京芸術劇場コンサートホール11/24(火)発売 12/19のみ11/19(木)発売問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp※演目とソリストの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 年末恒例となっている日本フィルの第九特別演奏会が今年も開催される。新型コロナウイルス感染拡大で最も影響を受けた音楽のジャンルは声楽や合唱に違いないが、様々な困難を乗り越えて、「第九」が上演されるのは喜ばしい。 今年は、二人の指揮者が登場する。一人は、日本フィルの桂冠名誉指揮者である小林研一郎。2020年は彼の生誕80年を祝して様々な演奏会が企画されていたが、コロナ禍によって多くは延期や中止となった。しかし、マエストロには、入国制限された外国人指揮者の代役のオファーが殺到。いつにも増して精力的に指揮活動を行っている。小林は9歳のとき「第九」を聴いて、作曲家を志したという。つまり、彼にとって、「第九」は、音楽の道を選ぶきっかけとなった特別な作品なのである。小林は、若い頃から、ベートーヴェンの場合、楽譜の行間に書かれた宇宙が何を語っているのか追求し続けなければならないと述べてきた。今まさに円熟の極みといえる「第九」を聴かせてくれるに違いない。 もう一人は、飯森範親。この10月に新国立劇場のシーズン・オープニングの《夏の夜の夢》を、急遽、代役で指揮して成功に導き、ますます評価を高めている。飯森が指揮を執る12月19日、20日の公演には、中村恵理や大西宇宙ら、世界的に活躍する今が旬の日本人歌手が登場するのも注目である。ベートーヴェンの生誕250年の締め括りにふさわしい華やかな「第九」となるだろう。仲道郁代 ベートーヴェンへの道 全6回ベートーヴェン 鍵盤の宇宙 第3回「ベートーヴェンとルター」音楽と宗教、それぞれに変革をもたらした二人の偉人に思いを馳せる文:高坂はる香2021.1/30(土)15:00 Hakuju Hall 11/21(土)発売問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp 「ベートーヴェンと偉大な魂との対話」をテーマとし、仲道郁代が2019年にスタートさせたプロジェクト「仲道郁代 ベートーヴェンへの道」。 毎回おもしろい切り口で各界の偉人がセレクトされているこの企画。第3回で取り上げられるのは、宗教改革で知られるマルティン・ルターだ(7月に予定されていた北斎をテーマとする第3回の延期により、テーマを繰り上げての開催)。 ベートーヴェンの誕生より300年近く前、15世紀終わりのドイツに生まれたルターは、当時、音楽を敬虔な芸術として愛した数少ない宗教改革者だったという。今回の公演では、そんな宗教改革の中心人物と、音楽の革命児ベートーヴェンを対比させることで、「信仰と宗教」という視点から、ベートーヴェンの音楽を読み解く。 仲道によるピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、第9番、第14番「月光」の演奏、文筆家・文化芸術プロデューサーの浦久俊彦を迎えたトーク。これらを通じ、宗教と音楽それぞれの分野において、各人が礎のうえにいかにして変革をもたらしたのか、そして二人の偉人に通じるものは何なのかを考える。 おそらく仲道のことなので、トークの内容を裏付けるような形で、ベートーヴェンの音楽に多くのことを語らせるに違いない。Hakuju Hallという響きの良い空間であることも嬉しい。ベートーヴェンの強く美しい音楽を楽しむ時間だけでなく、思考を巡らせるきっかけと発見がもたらされる公演となりそうだ。 ©Taku Miyamoto飯森範親 ©s.yamamoto小林研一郎 ©山本倫子

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