eぶらあぼ 2020.12月号
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104CDソナチネアルバム 第1巻/佐藤卓史J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲全集 Vol.2/渡邊順生&The Baroque Bandハイドン:交響曲集 Vol.10/飯森範親&日本センチュリー響ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番・第6番/トリオ・アコードクーラウ:3つのソナチネ/クレメンティ:6つの進歩的なソナチネ/ハイドン:ソナタ ハ長調/ベートーヴェン:2つのやさしいソナタ/ドゥシーク:ソナチネ ト長調/J.S.バッハ:前奏曲 ハ長調/モーツァルト:ロンド ニ長調/シューベルト:即興曲 変ロ長調~主題、スケルツォ 変ロ長調、ソナタ イ長調~第2楽章 他佐藤卓史(ピアノ)J.S.バッハ:4台のチェンバロのための協奏曲、チェンバロ協奏曲第3番・第7番・第4番・第8番、イタリア協奏曲、2台のチェンバロのための協奏曲第3番・第1番、ブランデンブルク協奏曲第5番渡邊順生 崎川晶子 鴨川華子 渡邊孝(以上チェンバロ)The Baroque Bandハイドン:交響曲第38番「こだま」、同第41番、同第43番「マーキュリー」飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」、同第6番トリオ・アコード【白井圭(ヴァイオリン) 門脇大樹(チェロ) 津田裕也(ピアノ)】ナミ・レコードWWCC-7932,7933(2枚組) ¥4000+税コジマ録音ALCD-1199,1200(2枚組) ¥3400+税収録:2017年12月&2018年3月、住友生命いずみホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00722 ¥3200+税フォンテックFOCD-9838 ¥2800+税古典派ソナタへの導入としてピアノ学習者の多くが通るソナチネ第1巻も、佐藤卓史の手にかかると華やかな魅力を放ち、実は優れた小品集だったのだと気づかせてくれる。佐藤がライフワークとするシューベルトはもちろん、クーラウやクレメンティの小さな曲でも、粒が立つようなハリのある音が耳をとらえる。生き生きとした自然な抑揚の演奏で、古典派作品の目指したもの―佐藤自身がライナーで記す「楽器の音だけを使って時間と空間に意味を与える」ことを実現している。聴いて楽しめるだけでなく、子どもの学習者が曲のイメージを広げる刺激としても価値のあるアルバムだ。(高坂はる香)鍵盤楽器奏者の渡邊順生がJ.S.バッハのチェンバロのための協奏曲を網羅する全集第2弾。2枚組のこのアルバムをもって17曲の協奏曲が揃う。本作は、アルバム冒頭を華やかに飾る「4台のチェンバロのための協奏曲」BWV1065や、独奏チェンバロのための「イタリア協奏曲」、さらに付録として、バッハが鍵盤楽器の協奏曲のスタイルで最初に手掛けた「ブランデンブルク協奏曲第5番」第1楽章の初期稿による演奏を含む10作品を収めている。日本の古楽を牽引してきたエキスパート奏者たちとのアンサンブルは、溌剌とした熱を帯びている。繰り返し聴きたい全集の誕生だ。(飯田有抄)日本センチュリー交響楽団と首席指揮者の飯森範親が2015年に開始した、ヨーゼフ・ハイドンによる104の交響曲を8年かけて全曲演奏する「ハイドンマラソン」。ステージと併行してCDリリースとハイレゾ配信も行う、壮大なプロジェクトだ。当盤には、17年12月の第11回、18年3月の第12回から、30代の壮年期に書かれた3曲を収録。いわゆる疾風怒濤期の作品ながら、過剰にロマン派的な感情移入を避け、理知的で透明感ある快演を構築している。「回を重ねるごとに楽員たちの“ハイドン愛”が高まってきた」と飯森。端正な響きの向こうに、確かに彼らの熱き思いが聴いて取れる。(笹田和人)トリオ・アコードのデビューアルバム。中期の傑作第5番「幽霊」では、固く結晶したような緊迫感が素晴らしい。冒頭のユニゾンのアタックに続き、門脇大樹のチェロの叙情的な歌に、白井圭のヴァイオリンが繊細に絡み、津田裕也の粒立ちの良いピアノの走句が煌めく。演奏の質の高さに最初から引き込まれる。緩徐楽章は「幽霊」の愛称のもとになった不気味さとターン音型の反復に悲劇性が浮かび上がる。終楽章はのびやかな主題と激しい回転運動、緩急の変化が表現に奥行きを与えている。第6番では第3楽章の歌が印象的。ピアノと弦が対話しながら連綿と旋律を紡いでゆく。とても美しい。(横原千史)SACDCDCD

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