eぶらあぼ 2020.12月号
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102SACDCDCDマーラー:交響曲第1番「巨人」、花の章/山田和樹&読響ウィテカー 聖なるヴェール/ウィテカー&ロサンゼルス・マスター・コラールアランフェス/河野智美三善晃へのトリビュート/加藤訓子マーラー:花の章、交響曲第1番「巨人」山田和樹(指揮)読売日本交響楽団ウィテカー:「聖なるヴェール」全曲(ヴェールが開く、暗く遠く離れた年に、家、マグネティック・ポエトリー、最後の一息、親愛なる友たち、君は立ち上がり 私は倒れる、奇跡の子 他)エリック・ウィテカー(指揮)ロサンゼルス・マスター・コラールリサ・エドワーズ(ピアノ)ジェフリー・ジーグラー(チェロ)ロドリーゴ:アランフェス協奏曲、ある貴紳のための幻想曲/J.S.バッハ:G線上のアリア~管弦楽組曲第3番 第2曲エア河野智美(ギター)梅田俊明(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団八木大輔(ピアノ)三善晃:組曲「会話」、トルス Ⅲ、リップル、マリンバと弦楽合奏のための協奏曲、六つの練習前奏曲加藤訓子(パーカッション)スコティッシュ・アンサンブル収録:2020年2月、東京芸術劇場コンサートホール(ライブ)日本コロムビアCOCQ-85512 ¥3000+税東京エムプラスPSIGCD630 ¥2857+税収録:2020年1月、サントリーホール(ライブ)アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1059 ¥3000+税ナクソス・ジャパンCKD635 ¥オープン今年2月、山田和樹が首席客演指揮者を務める読響とのコンビで、生気みなぎるマーラー「巨人」を作り上げた。最初の「花の章」は青春の息吹を丁寧に歌い上げ、「巨人」は読響の個性と能力を活かし、各パートのキャラクターを立たせて(特にトランペット!)、機能的ながら素朴な味わいも魅力的。各所のクライマックスには良い意味で「アマチュアのような熱気」が感じられ、最終盤のエネルギーには思わず笑顔になってしまう。オケの力量を最大限に引き出す山田ならではの境地であり、ポジティブで人間くさいマーラーは今こそ求められているものだろう。爆発的な大団円直後の歓声にも感慨。(林 昌英)人気作曲家のエリック・ウィテカーが、友人の詩人が妻の死を綴った詩を合唱曲として音楽化。両者の緊密な協業によって美しくも切ないレクイエムが生まれた。タイトルの「聖なるヴェール」はこの世とあの世を分けるカーテンを示唆し、詩人夫婦の出会い、出産、癌が発見された時の絶望から別れまでが全12楽章にまとめられている。哀惜の念の表現はシンプルなだけにいっそう痛々しいが、詩人はこれだけの言葉を紡ぐことができるようになるまでに10年を要したという。ロサンゼルス・マスター・コラールが深々とした共感をもって歌い上げた。別れに苦しんでいる人々に慰めを与える音楽だ。(江藤光紀)ここ10年で成功めざましいギタリスト河野智美の最新作。これまでにリリースされたアルバムすべてが高評価を得ていることでも注目の彼女だが、今回も2020年1月にサントリーホールで行われた東京フィル(指揮:梅田俊明)との共演コンサートのライブ録音、しかも巨匠ロドリーゴの2大コンチェルトに挑戦と、期待を裏切らない。実際に宮殿を訪れて体感したという、作曲家が作品に込めた想いを丁寧に織り上げたかのような「アランフェス協奏曲」も、原曲となったガスパール・サンスの優雅な世界がハーモニーから垣間見えてくる「ある貴紳のための幻想曲」、ともに見事。 (東端哲也)現代の最前線にいるパーカッショニストが、三善晃のマリンバ独奏のための全作品と協奏曲を収録した意欲的な1枚。過小評価されている感もある三善の業績(の一部)を世界に向けて発信した意義深い録音と言って間違いない。多種多彩な音色とニュアンスこまやかで研ぎ澄まされた表現を併せ持つ鮮烈な演奏は、すべてに聴き応え充分。魅力的な音空間と訴求力抜群の音楽に終始引き込まれ、マリンバの可能性と三善作品の凄さを改めて認識させられる。場の空気感が伝わるリアルな録音も特筆もの。いわゆる“現代音楽”を聴かないファンにもお薦めしたい好ディスクだ。(柴田克彦)SACD

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