eぶらあぼ 2020.12月号
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100CDCDCD窓のあるコンポジション~B’〈ノタシオン⇔ソナタ⇔バガテル〉/瀬川裕美子オーケストラ名曲集/バッティストーニ&東京フィルトリオ・エスパスモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、第4番/豊嶋泰嗣&大阪響ブーレーズ:12のノタシオン第8番・第9番・第6番・第7番、ピアノ・ソナタ第1番~第3番/ベートーヴェン:6つのバガテル瀬川裕美子(ピアノ)スメタナ:モルダウ/シベリウス:フィンランディア/ムソルグスキー:はげ山の一夜/ワーグナー:ワルキューレの騎行/ファリャ:火祭りの踊り/バーンスタイン:《キャンディード》序曲/外山雄三:管弦楽のためのラプソディー/バッティストーニ:エラン・ヴィタールアンドレア・バッティストーニ(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団C.シューマン:ピアノ三重奏曲 ト短調/ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第3番トリオ・エスパス【相川麻里子(ヴァイオリン) 植木昭雄(チェロ) 佐藤勝重(ピアノ)】モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番、同第4番、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ ハ長調、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 他豊嶋泰嗣(指揮/ヴァイオリン/ヴィオラ)林七奈(ヴァイオリン)大阪交響楽団 他トーンフォレストTFCC-2006 ¥2500+税日本コロムビアCOCQ-85511 ¥3000+税コジマ録音ALCD-7257 ¥2800+税収録:2017年8月、ザ・シンフォニーホール(ライブ) 他オクタヴィア・レコードOVCL-00737(2枚組) ¥3500+税アイディアに富んだプログラム構成により独自の演奏活動を展開するピアニストの瀬川裕美子。特に現代音楽の演奏において大きな存在感を放ち、近年はブーレーズを核に、あらゆる時代の音楽を組み合わせることで、音と他芸術との関連性を色鮮やかに示している。本盤はそんな彼女の芸術性、思考が見事に音楽言語化されたもの。ブーレーズ、そしてベートーヴェンの提示した音の配列の構成を綿密に読み解き、分子レベルともいえるほど緻密に描き出している。色、そして形が浮かび上がってくるような瀬川の演奏は、音の“輪郭”を鮮やかに見せてくれるものだ。(長井進之介)バッティストーニと東京フィルが泰西名曲と日本の名曲を併録して世に放った「BEYOND THE STANDARD」シリーズの5枚目はいわゆる“名曲集”、しかし一筋縄では行かぬ。「モルダウ」や「フィンランディア」と一緒に外山雄三の「管弦楽のためのラプソディー」やバッティストーニ自作自演となる「エラン・ヴィタール」が並んでいるではないか。収録曲はいずれも濃厚な民族性という点で共通しており、しかし最後の「エラン~」に至ってそれらはコスモポリタニズムに総括される。丁寧かつパッショネイトなその演奏はそれまでのバッティストーニから確実に一皮剥けている。(藤原 聡)同時期にフランスで学び、卓越したソリスト・室内楽奏者として活躍する同い年の名手たちが、2011年に結成したピアノ・トリオ。クララ・シューマンの冒頭から、溢れ出すがごときロマンティシズム。しかし、決して感情に溺れることなく、音楽創りにおける各々の立ち位置をきっちりと見極め、丁寧に音楽を紡いでゆく。だからこそ、スコアの随所にしたためられた繊細さが浮き彫りに。しかも、続くドヴォルザークでは、微妙に異なる色彩を見事に表現。「空間、時間、宇宙」などを意味するグループ名に込めた、「自在な音楽表現を人々と共有したい」との彼らの思いがつぶさに伝わってくる。(寺西 肇)豊嶋泰嗣のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲集の完結編。豊嶋と大阪交響楽団は協演も多くて相性がよく、弾き振りのオケ部分も丁寧に作られている。協奏曲第3番の冒頭の弦が爽やかで美しい。独奏部分は端正でイントネーションが清潔でモーツァルトにぴったり。緩徐楽章は上品なノットルノの風情で歌い回しもきれい。第4番の入り組んだ楽想の処理、華麗な技巧と転調の味わい、入念なカデンツァなど聴きものだ。協奏交響曲では、豊嶋がヴィオラにまわり、林七奈との絶妙なアンサンブルを楽しませてくれる。コンチェルトーネは珍しい曲で、若書きながら、隠れた佳品であることを実感させる。(横原千史)SACD

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