eぶらあぼ 2020.11月号
41/169

38歌劇《ヴォルフ イタリア歌曲集》リートの世界が愛のドラマに生まれ変わる文:室田尚子11/28(土)15:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス  03-5685-0650https://www.t-bunka.jp 日本オペラ界の人気演出家・岩田達宗が、ヴォルフの「イタリア歌曲集」をオペラに仕立てるという。「イタリア歌曲集」は、パウル・ハイゼがドイツ語に訳した「イタリアの歌の本」から、ヴォルフが「リスペット」と呼ばれる短い恋愛詩を中心に46篇を選んで作曲したもの。声種の指定はないが、男女の詩がほぼ半分ずつ含まれているため、曲順を並び替えると男女の愛のドラマのように演奏することができる。この「並べ替え」は1958年のザルツブルク音楽祭で、ヴォルフの研究者でピアニストでもあるエリック・ヴェルバが最初に行ったものだが、今回の企画は、さらにそれを一歩進めて「オペラ」、すなわち「舞台芸術」として創り上げようとするものといえる。 物語は1組の若い男女が出会い、恋に落ち、嫉妬や浮気や周囲の反対など様々なことを経験しながら、最終的には結ばれていくというもの。それを、老田裕子(ソプラノ)、小森輝彦(バリトン)、山本裕と船木こころ(ダンサー)、そして井出德彦(ピアノ)という「5人の人間の生身の肉体」によるパフォーマンスで描き出していく。そこには、「ほんとうに大切なものは、ささやかなものの中にある」という「イタリア歌曲集」自体のテーマが反映されている。科学技術がどれほど発展しようとも、人間の幸せはその人の心の中にしかないということを、コロナ禍に見舞われた今、私たちは実感している。人間の中に宿る命の美しさこそが大切なのだということを教えてくれる歌劇《ヴォルフ イタリア歌曲集》。まさに今、観るべきオペラではないだろうか。印田千裕(ヴァイオリン) & 印田陽介(チェロ) デュオリサイタル~ヴァイオリンとチェロの響き Vol.9~知られざる佳品を掘り起こす、発見と驚きの旅 文:笹田和人11/29(日)14:00 王子ホール問 マリーコンツェルト03-3983-2026 http://www.chihiroinda.com ヴァイオリンとチェロ。弦楽四重奏をはじめとする室内楽やオーケストラでの“共演”は多いものの、これらを二重奏の形で耳にする機会となると、実は意外なほどに少ない。そんな“ミニマムな室内楽”の面白さと魅力を、姉弟ならではの息の合った快演で追求し続けているのが、印田千裕&陽介によるデュオ。第9弾のリサイタルでも、生誕250年のベートーヴェンをはじめ、バロックから現代までの“知られざる佳品”を披露する。 東京藝大から英国王立音楽院に学び、古典作品はもちろん、邦人作曲家による作品の紹介に力を注ぐなど、骨太かつしなやかな活動を続ける実力派ヴァイオリニストの姉・千裕。そして、やはり東京藝大からチェコ・プラハ音楽院に学び、ジャンルを超えた多彩な活動を展開するチェリストの弟・陽介。このデュオによるステージは、清冽な響きと幅広い表現力に加え、音楽史の影に隠れた佳品も掘り起こす、さながら発見と驚きの旅だ。 今回は、クラリネットとファゴットのために書かれた「3つの二重奏曲」WoO27から第3番と、まだ故郷ボンにいた頃に書いた「二重奏曲(断章)」と併せて軸に。イタリア・バロックの名匠ダッラーバコから19世紀フランスのダンクラまで、彩り豊かな作品をセレクト。さらに、20世紀ベルギーのヨンゲン(ジョンゲン)やフランスのリヴィエの作品やクセナキス「ディプリ・ジーア」、遠藤雅夫「デュオスクロール1b」と、近現代の先鋭的なサウンドも味わう。小森輝彦岩田達宗 ©大阪音楽大学井出德彦山本 裕船木こころ老田裕子左:印田千裕 右:印田陽介

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る