eぶらあぼ 2020.11月号
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36左:中井恒仁 右:武田美和子中井恒仁&武田美和子ピアノデュオリサイタル ピアノの芸術Vol.5~ベートーヴェン生誕250周年記念 Part 1 「運命」~11/30(月)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp https://teket.jp/98/1029(配信)中井恒仁 & 武田美和子(ピアノデュオ)ベートーヴェンの音楽に込められた前向きな力強さを感じてほしい取材・文:長井進之介Interview 共に「国際音楽コンクール世界連盟WFIMC」加盟のコンクールで入賞しているピアニスト二人による「ピアノデュオ 中井恒仁&武田美和子」。昨年結成20年を迎えたこのデュオは、確かな実力と幅広いレパートリー、そして一糸乱れぬアンサンブルによって、日本では決してメジャーではなかったピアノアンサンブルの魅力を多くの人々に伝え、このジャンルの道を切り拓いてきた。コロナ禍の影響により、今年の上半期のほとんどのリサイタルが延期や中止になってしまっていたが、ついに待望のデュオリサイタルが開催されることとなった。 中井「今年生誕250年を迎えたベートーヴェンでまとめました。私たち二人にとってこの作曲家は特別な存在ですから、この記念すべき年にどうしても取り上げたかったのです。今回はフーゴ・ウルリヒ編曲による4手連弾版の『運命』交響曲を核に、それぞれのソロを加えたプログラムにしました」 武田「『運命』と同じく、ベートーヴェンにとって重要な調であったハ短調で書かれた『悲愴』ソナタと、そして“運命の動機”が使われている『熱情』ソナタを選びました。『運命』は逆境に立ち向かい、勝利に向かう音楽です。特に厳しい情勢のいま、演奏する私たちはもちろん、お聴きくださる皆様にも前向きな力を感じていただけたらと思っています」 今回メインとなる「運命」交響曲は連打も多く、ピアノで演奏するには非常に難しい楽曲だが、オーケストラの作品を演奏する時にはどのようなことを心掛けているのだろうか。 中井「楽器の音色を想像して演奏することはもちろんですが、“ピアノでやるからこそ”の魅力も出したいと思いながら音楽をつくっています。多少テンポ感を原曲より速めにしたり…といったこともしています」 武田「ピアノとオーケストラでは発音の仕方やタイミングが違うので、そういった“間合い”も意識しながら、常に立体感のある音色にしようと二人で心掛けています」 中井と武田の公演は、デュオはもちろん、それぞれのソロでも、いつも非常に練りこまれたテーマ性をもつプログラムが特徴的だ。 中井・武田「プログラムはいつも入念に吟味して決定しています。今回も、お聴きくださる皆様に、はじめから終わりまで物語性やメッセージを感じていただけたらと思っています」 深い感動に加え、前向きに生きていく力を与えてくれるリサイタルとなりそうだ。ベートーヴェン・イヤーの締めくくりに、ぜひお聴きいただきたい。第502回 日経ミューズサロン前橋汀子カルテット ベートーヴェン生誕250周年記念公演4人の名手が奏でる珠玉のベートーヴェン文:林 昌英 ヴァイオリンのソリストにとって、ベートーヴェンといえば自ずと協奏曲と10曲のソナタが中心レパートリーになる。しかし、日本を代表するヴァイオリニストとして半世紀以上も第一線を走り続けてきた前橋汀子は、そこに留まらなかった。この作曲家の奥義ともいうべきジャンル、弦楽四重奏曲に挑戦するために、クァルテットを結成。しかも、その領域でも大きな成果を挙げていて、真の芸術家というものの凄みをも見せ続けている。そんな前橋の情熱を支えるメンバーは、久保田巧、川本嘉子、原田禎夫という、やはりソリ11/30(月)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 http://www.nikkei-hall.com前橋汀子 ©篠山紀信ストであり、室内楽でも第一線で活躍を続ける重鎮たち。万全にして理想の弦楽四重奏団と言えるだろう。 ベートーヴェン生誕250年の今年、彼らは11月末に日経ホールで、第4、11、15番を聴かせる。作曲者の初・中・後期の人気作品が揃い、意気込みの強さは推して知るべし。世の中全体のあり方が変わってしまった今こそ、前橋たちの至芸を、そしてベートーヴェンの究極の世界を体感したい。

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