eぶらあぼ 2020.11月号
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35夜クラシックVol.27 神尾真由子(ヴァイオリン) ・ 田村 響(ピアノ)秋の夜に世界的コンクールの覇者競演が実現!文:柴田克彦11/13(金)19:30 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp 人気アーティストがトークを交えながら名曲を聴かせる、文京シビックホールの室内楽シリーズ「夜クラシック」。仕事帰りにも至便な19時30分の開演と相まって高い支持を集める当シリーズに、日本屈指のヴァイオリニスト、神尾真由子が登場する。11月の本公演には、当初予定のピアニスト、ミロスラフ・クルティシェフに代わって田村響が出演。2007年のチャイコフスキー国際コンクールと、同年のロン=ティボー国際コンクールの覇者による興味津々のデュオが実現することとなった。 神尾は、豊麗な音と強靭なテクニックを駆使した濃厚な演奏で世界中を魅了し続けながら、近年そこに深みや味わいを加えている。ゆえに今その表現を改めて耳にしたいところだ。田村も内外で活躍。クリアな音色と深く的確な打鍵で、ナチュラルかつ雄弁な音楽を聴かせている。しかもヴェンゲーロフ、堀米ゆず子、篠崎史紀などヴァイオリニストとの共演経験が豊富。相手を引き立てつつ巧みに自己を表現する彼の共奏も聴きものとなる。 演目は、ショーソンの「詩曲」、ラヴェルの「ツィガーヌ」、プロコフィエフの「5つのメロディ」とヴァイオリン・ソナタ第2番が並ぶ、コンパクトにして濃密な内容。それぞれ詩的な情趣、民族性や超絶技巧、ロシア的な歌い回しや躍動感とポイントが異なるので、音楽の変化を味わいながら神尾と田村の今を端的に知ることができる。また、当シリーズの冒頭で必ず演奏されるドビュッシー「月の光」の表現も楽しみだ。この名手デュオ、生演奏に気軽に触れたい方もディープなファンも要注目!波多野睦美(メゾソプラノ) 歌曲の変容シリーズ 第14回終わりなき歌 ~カルテットと声の戯れ~弦の音色と共鳴し合いながら、ステージを包み込む美しき旋律文:柴辻純子11/27(金)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp メゾソプラノの波多野睦美が2005年から王子ホールで継続中の「歌曲の変容シリーズ」。ルネサンスから現代に至るまでの歌曲を独自の視点でプログラムを構成、多彩な共演者とともにその魅力を再発見してきた。14回目となる今年は、「カルテットと声の戯れ」と題して、弦楽器と声楽の数々の出会いで魅了する。 弦楽四重奏とピアノの伴奏による歌曲といえば、フランスの作曲家ショーソンの、去っていった恋人に想いを寄せる〈終わりなき歌〉が有名だが、英国近代のヴォーン=ウィリアムズ「ウェンロックの断崖で」やガーニー「ラドロウとテイム」も同様の伴奏の歌曲集。フィンジも、弦楽四重奏が伴奏の歌曲集「小道や柵の脇を」を残した。これら独特の質感をもつ英国の歌曲は、ロンドンのトリニティ音楽大学で学んだ波多野の得意とするところ。彼女の明晰な発音と温かな声の響きは、弦楽器の音色と美しく溶け合うだろう。 また、ブラームスの死後に発見された歌曲集「オフィーリアの5つの歌」が、歌劇《リア》で知られる現代ドイツの作曲家アリベルト・ライマン編曲版(弦楽四重奏の伴奏)というのも興味深い。実演に触れる貴重な機会だ。 共演は、草冬香(ピアノ)、滝千春、直江智沙子(以上ヴァイオリン)、大島亮(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)の中堅・若手の名手たち。ブラームス「弦楽四重奏曲第2番」第1楽章などもあり、歌詞はないが、心に迫るドラマを作り出す。深まる秋に味わいたい、本格派のコンサートだ。©HAL KUZUYA田村 響 ©武藤 章神尾真由子 ©Makoto Kamiya

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