eぶらあぼ 2020.11月号
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32バッハ・コレギウム・ジャパン ベートーヴェン「運命」とハ長調ミサ曲今こそ“苦悩から歓喜へ”、そして“安らぎの世界”へ 文:柴田克彦11/29(日)15:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール 10/18(日)発売問 SAFチケットセンター0570-064-939 https://www.saf.or.jp他公演 11/28(土)東京オペラシティ コンサートホール(バッハ・コレギウム・ジャパン チケットセンター03-5301-0950) 毎年恒例のバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)による彩の国さいたま芸術劇場公演。今年は生誕250年を記念して、同ホールでは初のベートーヴェン・プログラムが披露される。しかも交響曲第5番「運命」&ミサ曲ハ長調という普段まず聴けないカップリングだ。第5交響曲は“苦悩から歓喜へ”を具現化した作品。深刻なハ短調に始まり、明るいハ長調に到達する。そしてそれを受け継ぐ形で、優美さと劇的表現が溶け合ったハ長調のミサ曲が奏され、安らかな境地に至る。この構成は現在の状況下にすこぶる相応しい。しかも両曲はほぼ同時期の作品。すなわちミサ曲ハ長調は、中期“傑作の森”を形成する明快かつ密度の濃い音楽だ。「ミサ・ソレムニス」の陰に隠れて上演機会の少ない同曲を、最高水準の演奏で生体験できるとなれば、それだけでも足を運ぶ価値がある。 今年創立30周年を迎えたBCJは、言うまでもなく世界的な古楽アンサンブルだが、近年は古典派以降の作品でも清新な名演を展開し、指揮の鈴木雅明はモダン・オケでも卓越した手腕を発揮している。それに彼らは2019年にベートーヴェンの「第九」を取り上げ、ピュアにして引き締まった、ヒューマンな表現を聴かせてもいる。よって今回の両曲への期待値は極めて高い。むろん宗教曲を得意とするソリスト陣と粒揃いの合唱も大きな強み。この公演を604席のホールで聴くのは実に贅沢だし、別日に行われる鈴木雅明のレクチャー(11/21)を聞けば、さらに理解が深まるであろう。 今こそ、作品誕生時の瑞々しい響きで、“暗から明へ”の世界を体感したい。鈴木雅明 ©Marco Borggreve浜離宮ランチタイムコンサートvol.203早川りさこ(ハープ) & 池松 宏(コントラバス)名手二人の邂逅が新鮮な調和をもたらす文:笹田和人12/18(金)11:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/ 平日お昼の時間帯に、世界有数の響きを誇るコンサートホールで、第一線プレイヤーによる名演を手ごろな料金で楽しめると好評のシリーズ「浜離宮ランチタイムコンサート」。第203回には、NHK交響楽団ハープ奏者の早川りさこと、東京都交響楽団首席コントラバス奏者の池松宏が登場し、クラシックからポピュラーまで、ハープの煌びやかな音色を縦糸に、コントラバスの温かな音色を横糸として、多彩な名旋律を織り上げてゆく。 東京藝大に学んだ早川は、第3回日本ハープコンクールや、第2回アルピスタ・ルドヴィコ・スペイン国際ハープコンクールで優勝。2013年にはタン・ドゥンの新作協奏曲を作曲者自身の指揮で世界初演、他にも数々の作品の日本初演も手掛けた実力派奏者だ。一方の池松は、桐朋学園大学卒業後にN響やニュージーランド交響楽団の首席奏者を歴任。現在は都響首席の傍ら、サイトウ・キネン・オーケストラなどでも活躍、アルバム7枚を発表するなど、ソロ楽器としてのコントラバスの可能性も追求し続けている。 今回は、まず、祈りに満ちたカッチーニ「アヴェ・マリア」から、超絶技巧に彩られたモンティ「チャルダッシュ」と超絶技巧曲まで、多彩な魅力に満ちたクラシックの名曲を披露。さらに、ビリー・ジョエルの「スーベニア」などポップス曲や、ガーシュウィンのミュージカル・ナンバーから「誰かが私を見つめてる」、メキシコの作曲家ポンセによる「エストレリータ」など、ジャンルを超えたプログラムを、2つの魅力的な音色を溶け合わせ、たっぷりと聴かせてくれる。

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