eぶらあぼ 2020.11月号
109/169

106CDCDCDCD藤倉大:タートル・トーテムフランス音楽黄金期の至宝/堀江真理子おのふじの憧れ/小野富士&野田清隆大石哲史、林光を歌う―雨の音楽―藤倉大:THREE、ホルン協奏曲第2番(アンサンブル・ヴァージョン)、Obi(帯)、タートル・トーテム、Umi(海) 他福川伸陽(ホルン) 佐藤紀雄(指揮) アンサンブル・ノマド 東野珠実(笙) 佐藤洋嗣(コントラバス) 吉田誠(クラリネット) アントニ・ヴィット(指揮) 名古屋フィルハーモニー交響楽団 他プーランク:メランコリー、間奏曲 変イ長調/サティ:ジムノペディ第1番、グノシエンヌ第2番/ラヴェル:鏡/フォーレ:ピアノ五重奏曲第2番堀江真理子(ピアノ) N響メンバーによる弦楽四重奏団【大宮臨太郎 横溝耕一(以上ヴァイオリン) 中竹英昭(ヴィオラ) 宮坂拡志(チェロ)】エネスク:ヴィオラとピアノのための演奏会用小品/ヴュータン:ヴィオラ・ソナタ 変ロ長調/ベンジャミン:ヴィオラ・ソナタ小野富士(ヴィオラ)野田清隆(ピアノ)林光:雨の音楽、ぼくがつきをみると、ちょうちょうさん、みちでバッタリ、赤い魚と白い魚、魚のいない水族館、ねがい、五月の夜(アオバズクの季節)、この害虫(むし)だけは…、舟唄、告別、壁のうた、八匹めの象の歌、花のうた、歌芝居《魔法の笛》より〈遠いはるかの時の彼方から〉 他大石哲史(うた) 服部真理子(ピアノ/カホン) 野原孝(ソプラノサクソフォン/アルトサクソフォン/口笛)収録:2019年9月、東京芸術劇場コンサートホール(ライブ) 他ソニー ミュージックSICX-10008 ¥3000+税収録:2019年11月、東京文化会館(小)(ライブ)ナミ・レコードWWCC-7930 ¥2500+税日本アコースティックレコーズNARC-2153 ¥2500+税コジマ録音ALCD-7258 ¥2800+税今回も藤倉大の倦むことを知らない能産性に圧倒させられた。フル編成の管弦楽曲、協奏曲を含む全6曲。アイディア満載の楽曲が収録可能時間いっぱいに繰り広げられる。藤倉は各奏者との緊密なコラボを通じて聴き手の身体性を喚起するユニークな表現領域を開拓してきたが、ブックレットの対談を読み、録音の編集作業まで自分でこなしていることを知って、二度驚いた。彼にとっては生の音をスピーカーで鳴り響く形にもっていくまでが作曲なのだろう。最後の曲「Umi」に、この人の個性は元来ロマンティックな歌にあるのだろうと改めて感じた。その傾向は近年、ますます強まっているように思う。(江藤光紀)フォーレ作品をライフワークとしながら、日本の西洋音楽受容や演奏技術の伝播にも関心の高い堀江真理子。新譜は2019年11月12日に東京文化会館小ホールで行われたコンサートのライブ録音である。プーランク「間奏曲」、サティ「ジムノペディ第1番」、ラヴェル「鏡」などの独奏曲は、アカデミックな蓄積と、自身の感性と閃きとの絶妙なバランスにより、個性的な作曲家たちの声を生々しく伝え、温かみのある音色で和声の移ろいを描く。N響メンバーと共演したフォーレのピアノ五重奏曲第2番は、推進力に満ちながらも叙情的で、晩年のフォーレ作品の爽やかさを浮き立たせている。(飯田有抄)ヴィオラの魅力のひとつは、弾き手の“年輪”が感じられやすいことかもしれない。NHK交響楽団の元・次席奏者、モルゴーア・クァルテットの一員としてもおなじみの名奏者、小野富士が満を持して挑んだアルバムに接し、しみじみ感じ入る。自身が10代の時期に夢中になった「素敵なメロディ」に満ちた作品をぜひ、という小野の思いが反映された3曲は、メロディと技巧が魅力的な、広く聴かれるべきオリジナルの佳品ばかり。演奏には彼の温かい語り口と、音楽への厳しい姿勢の両面が刻印されている。特に小野の奏でる低いC線の響きの豊かさと深みは、やはり経験を重ねた匠ならではのもの。(林 昌英)こんにゃく座の大石哲史、待望の「林光を歌う」。基本的には平明ながら凝った和声やメロディも散りばめられて誠に含蓄のある林光の歌たちを、大石はなんの虚飾も交えずに真っ直ぐ、素直に歌う。その実直な歌いぶりと明晰でていねいな日本語には居住まいを正される。なるほど完璧に整った演奏ではないが、林光の歌にはそういうものは重要ではない。手作りのあたたかみ、親密さこそが必要なのだ。それが大石の歌にはある。服部真理子の柔らかに煌めくピアノ(カホンも演奏)、鮮烈なアクセントをもたらす野原孝のサクソフォンもまた良い仕事ぶり。「うた」を愛するすべての人に。(藤原 聡)

元のページ  ../index.html#109

このブックを見る