eぶらあぼ 2020.10月号
48/169

45《バロック・ライヴ劇場》第12回公演 フォー・タイムズ・バロック若き4人のスピード感あふれる痛快なアンサンブル文:朝岡 聡10/27(火)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp 桃栗三年柿八年…。フォー・タイムズ・バロックはもう7年…。待望の初来日。 メンバー全員まだ20代後半ではあるものの、すでにこのメンバーで十分演奏を重ねてきただけに、パフォーマンスの密度とテンションの高さはさすがの4人だ。 激しさもあるし、表現の貫きや意思の強さにおいては確固たる方向性も際立っている! 役割と個性がハッキリした4人編成からしてビートルズも彷彿とさせるような雰囲気。そう、これぞバロックと言うよりはロックと表現したほうが良いかもしれない。 その真骨頂は、やはりテレマンのトリオ・ソナタだろう。リコーダーとヴァイオリンがソロをつとめ、チェロとチェンバロが通奏低音を重ねる彼らのスタイルの基本がここにある。彼らの演奏は、開始と同時に「風」が吹く。疾風のようなスピード感に加えて強拍によるアクセントもしっかり効かせて、多彩な音のニュアンスも存分に散りばめてくれる。 それぞれのテクニックも確固たるものがあって、いわゆる超絶技巧のフレーズなどもゴリゴリに弾き散らすのではなく、あくまで愉悦に満ちた響きになるのが素晴らしい。ヴィヴァルディやコレッリなどのイタリアものでも、即興や装飾に4人のセンスの良さが十分に感じられて、これまた愉快、痛快の連続。 彼らの音楽を真に楽しむにはライブは極めて重要な要素で、聴衆と演奏の一体感の中で次々に湧きおこるファンタジーが一期一会の演奏を創るに違いない。あぁ、生で聴きたい!左より:トマス・トリーシャイン ©Rogier Veldman/ヨナス・チェンダーライン ©Kenta Kawamura/カール・シムコ ©Daniel Wetzel/アレクサンダー・フォン・ハイセン ©Daniel Wetzelフレッシュ名曲コンサート 楽しいオーケストラ!鈴木優人(指揮) × 日本フィルハーモニー交響楽団演奏とトークでひもとく名曲の魅力文:長谷川京介11/15(日)15:00 江戸川区総合文化センター問 江戸川区総合文化センター03-3652-1106 https://edogawa-bunkacenter.jp 「フレッシュ名曲コンサート」は、次代を担う新進気鋭の音楽家が多数登場し、力のこもった新鮮な演奏を聴かせてくれることで定評がある。リーズナブルな入場料も人気の一つになっている。 今回、江戸川区総合文化センターで行われるコンサートでは、いま日本の音楽界で最も期待されているアーティストの一人、鈴木優人が日本フィルハーモニー交響楽団を指揮し、ドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』」他を演奏することが注目の的となるだろう。 鈴木はバッハ・コレギウム・ジャパンの首席指揮者、鍵盤奏者としてバロック音楽の分野で活躍するだけではなく、今年4月から、読売日本交響楽団の指揮者/クリエイティヴ・パートナーに就任、NHK交響楽団の定期にも登場し、古典派からロマン派、現代音楽まで幅広いレパートリーに取り組んでいる。またヴィオラのアントワン・タメスティと共演するほか、調布国際音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーとして舞台演出、企画プロデュースをてがけるなど、まさにマルチな活動を展開する音楽家である。 ピアノで共演するのは第15回東京音楽コンクール ピアノ部門第2位入賞の原田莉奈。彼女の瑞々しい演奏はベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」にうってつけであり、鈴木との間にどのような音楽的愉悦が生まれるのか期待したい。 このコンサートには、鈴木がオーケストラを構成する楽器を紹介しながら、音楽の聴き方・楽しみ方を伝えるという趣向もこらされている。原田莉奈 ©平舘 平鈴木優人 ©Marco Borggreve

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る