eぶらあぼ 2020.10月号
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42文京シビックホール20周年記念公演 オーケストラ・アンサンブル金沢 in BunkyoOEKと名手たちが華やかに彩るホールのアニヴァーサリー文:江藤光紀10/25(日)15:00 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp 文京シビックホールが文京区の音楽文化の中核施設としてオープンして、早くも20年が過ぎた。交通の便に加え、吹奏楽や合唱などどんなタイプの音楽にもしっくりとなじむ音響の良さから、地域の顔としてだけでなく首都圏の拠点としての重要性も増している。 10月のアニヴァーサリー公演には、北陸の雄オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が登場する。石川県立音楽堂を拠点に精鋭を集めたこの室内オーケストラは、現在、フランスの名匠マルク・ミンコフスキを芸術監督に戴いているが、若手の起用にも積極的で時代の先を読む眼力がうかがえる。 本公演を指揮するのは原田慶太楼。ここ数年国内でも評価を上げ、来春からは東京交響楽団の正指揮者に就任するが、そのキャリアは規格外れだ。アメリカ、ロシアなど、これだと思った先に自ら飛び込む行動力で聴き手の心をつかむ独自のスタイルを培ったが、現今の音楽界の困難な状況下でこの力が一層の注目を浴びている。今回はメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」、「夏の夜の夢」よりスケルツォというノリのよい選曲で、この人のセンスを知るには格好のプログラムだ。 ソリストには二人のベテランが起用される。今年デビュー45周年を迎えるヴァイオリンの大谷康子は、ヴィヴァルディの「四季」より春、冬で生き生きとした弓の芸を披露。ショパン弾きとして名実ともに日本を代表する横山幸雄は、ロマンティックなピアノ協奏曲第2番を取り上げる。原田がOEKとともに二人の持ち味をどう演出するかというあたりも興味深い。トッパンホール ランチタイムコンサート Vol.107 荒井里桜(ヴァイオリン) 美しい抒情と悪戯期待の新鋭の本格派プログラムを堪能する濃密な30分文:飯尾洋一10/20(火)12:15 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com 10月20日、トッパンホールの「ランチタイムコンサート Vol.107」に出演するのはヴァイオリニスト、荒井里桜。2018年の第87回日本音楽コンクール第1位、17年の第15回東京音楽コンクール第1位および聴衆賞などのコンクール歴を誇る注目の新星である。現在、東京藝術大学4年に在学中ながら、すでに国内主要オーケストラとの共演も多い。ジェラール・プーレ、永峰高志、澤和樹、山崎貴子、堀正文、玉井菜採らに師事する。 今回の公演では、ピアノの日下知奈との共演で、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番、およびパガニーニの「ロッシーニの《タンクレディ》のアリア〈こんなに胸騒ぎが〉による変奏曲」の2曲が演奏される。ランチタイムコンサートといっても、がっつりと本格派のレパートリーを聴かせてくれるのがトッパンホールの本シリーズならでは。 プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番は、もともとはフルート・ソナタとして書かれた作品。原曲の演奏機会が十分に得られなかったところに、オイストラフがヴァイオリン用の編曲を強く進言して、二人の共同作業からヴァイオリン・ソナタ第2番として生まれ変わった。プロコフィエフの作品のなかでも、とりわけ清新なリリシズムを湛えた名曲といっていいだろう。一方のパガニーニ作品はオペラ由来の歌心と、この作曲家ならではの名技性が聴きどころ。新鋭の魅力をさまざまな角度から伝えてくれるプログラムが用意された。左より:原田慶太楼 ©Claudia Hershner/大谷康子 ©Masashige Ogata/横山幸雄 ©アールアンフィニ/オーケストラ・アンサンブル金沢

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