eぶらあぼ 2020.10月号
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36熊倉 優(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団期待の若手指揮者と世界的奏者も登場する注目のステージ文:林 昌英第625回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉10/8(木)19:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 夏場から各地のオーケストラが、多くの制限や変更はありながらも、そこに個性や新味を加えて活動を再開している。特に、これまで体験できる機会の少なかった国内の若手指揮者の登場が多くなり、フレッシュな演奏を聴けるチャンスが増えていることは、大いに歓迎したい。 新日本フィルは10月定期演奏会に注目の指揮者、熊倉優を迎える。今年28歳という若さながら、第18回東京国際音楽コンクール〈指揮〉第3位などの入賞歴に加えて、すでにN響のアシスタントを3シーズン務め、音楽祭など公式の演奏会でN響を振り、鮮烈な演奏が評判になるなど、この年代で最も期待を集める指揮者のひとりである。先日テレビ放送されたN響活動再開の収録演奏を任されたことも、彼への信頼の厚さを物語る。今回は新日本フィルの定期に初登場、さらなる飛躍の場となるに違いない。また、新日本フィルは活動休止期間を経ても高い演奏水準を維持していて、7月定期では今年26歳の太田弦の指揮で快演を実現するなど、「期待の若手」との相性も良い。今回熊倉が聴かせるのはチャイコフスキーの交響曲第4番。情熱あふれる超名曲で、存分に彼の音楽が爆発するのを楽しみにしたい。Music Program TOKYO プラチナ・シリーズ2 安倍圭子 ~歩み続けるマリンバ界のパイオニア~マリンバの表現力と芸術性を開拓し続ける達人の現いま在文:小室敬幸10/16(金)19:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp 今では信じられないかもしれないが、マリンバは50年ほど前まで芸術的な表現ができる“独奏楽器”とみなされてこなかった。合奏の一部ならともかく、独奏の場合は軽い曲目を演奏するのが当たり前だったのだ。そんななか、三善晃などの作曲家と協働してシリアスなレパートリーを生み出し、メーカーと協働して楽器の可能性を広げ、国内外の大学で優秀なマリンバ奏者を数多く育成。そして何より、圧倒的な説得力をもつ演奏によって、現在のマリンバのイメージを築きあげたのが他ならぬ安倍圭子であった。いま現在も、御年83歳という年齢を感じさせぬパフォーマンスを披露する安倍が、およそ2年半ぶりに東京文化会館の舞台に立つ。 共演者には信頼を寄せる実力派の弟子たちと、大ベテランのピアニスト今井顕をむかえ、作曲家としてマリンバの新たな魅力を切り開き続けてきた新旧の安倍作品がプログラムに並ぶ。例えば、1980年代に書かれた「竹林」「遥かな海」など、マリンバのレパートリーとして世界で定着している独奏曲が、安倍自身によって後年編み直された二重奏版、はたまた彼女が即興的にパートを加える三重奏版で演奏されることで、安倍の代名詞的作品を聴き慣れた方であっても新鮮な気持ちで自作自演に立ち会えるはず。他にも環境問題に音楽で真摯に向き合ったマリンバ小協奏曲や、2010年代に書かれた近作まで披露される。この一夜で安倍が成し遂げてきた業績の一端に触れてほしい。 この日は前半に世界的ヴァイオリニスト、竹澤恭子が登場し、ブラームスの協奏曲を弾くのも注目。日本を代表する名手である竹澤のブラームスとなれば、最高の聴きものとなる。さらに若きマエストロとの共演ということで、新しいタイプの名演への期待も高まる。竹澤恭子 ©松永 学熊倉 優

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