eぶらあぼ 2020.10月号
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30左より:大槻孝志、望月哲也、青山 貴、山下浩司、河原忠之 ©日本コロムビア株式会社IL DEVUコンサート~学生合唱団を迎えて~10/18(日)14:00 やまと芸術文化ホール(大和市文化創造拠点シリウス内)問 やまと芸術文化ホール チケットデスク046-263-3806https://www.yamato-bunka.jp/hall/Iイル・デーヴLDEVU(ヴォーカル・グループ)今だからこそ感じたい、フトメン5人が紡ぐことばの温もり取材・文:宮本 明Interview 1階にスターバックスが併設された新しいスタイルの図書館も話題の、神奈川県の大和市文化創造拠点シリウスに10月、IL DEVUが登場する。日本のオペラ界の最前線で活躍する、望月哲也、大槻孝志(以上テノール)、青山貴(バリトン)、山下浩司(バスバリトン)の4人の歌手と、声楽界屈指の名ピアニスト河原忠之によるスーパー・ユニット。チケットはいつも完売必至で、さらに今年は感染症の影響で、関東圏で彼らを聴けるのはここだけとあって、なおさら貴重な公演だ。 「総重量500kgの重量級クラシック・ヴォーカル・グループ」というおもしろキャッチフレーズと裏腹に、彼らの選曲には、生命の大切さや生きる勇気を伝えるメッセージのこもった楽曲が多い。 望月「受け取る側には重いかもしれないとも思うんです。でも自分たちの音楽が誰かを勇気づけることができるか、人の心をどう動かすか。演奏家として大事にしていることです。それが使命なのかなという思いもあります」 今回の曲目は取材時点では未定だが、同時期にリリースされる彼らの3枚目のアルバム『LOVE CHANGES EVERYTHING』(日本コロムビア)収録曲もたっぷり聴かせてくれるはず。昭和歌謡からJ-POP、洋楽、そして日本の合唱曲など、多様なナンバーがバランスよく並ぶアルバム。各々のお気に入りを教えてもらった。 望月「木下牧子さんの〈鷗〉はコンサートでも何度も歌っていますが、録音のプレイバックを聴いてみて、自分が想像していたよりもずっと素敵な響きなんだなと思いました」 大槻「新編曲の〈Love changes Everything〉(ミュージカル『アスペクツ・オブ・ラブ』/萩森英明編)は、いつもはセカンド・テノールを歌っている私がメロディなので、パートのバランスなどいつもと違う変化を感じていただけます」 青山「〈アンパンマンのマーチ〉(内門卓也編)はすごくゆったりした曲調の美しい編曲。バリトンのソロから始まるので、頑張りました」 山下「〈花は咲く〉はコンサートで何回か歌っていますが、今回、編曲の森田花央里さんが、編曲時の心情などを細かく話してくれました。そうするとやはり和声なども、より腑に落ちる。難しい曲ですけど、頑張って歌っていきたいです」 河原「私はちょっとわがままに2曲(笑)。中島みゆきさんの〈糸〉(信長貴富編)は、IL DEVUと自分に置き換えて、『縦の糸は4人の歌手。横の糸はピアノの私。織りなす布はいつか誰かを暖めうるかもしれない』という気持ちで録音しました。もう一曲は、私も〈アンパンマンのマーチ〉。いま、(コロナ禍で)音楽をやめなければならなくなった仲間もいっぱいいるんです。そんな彼らの応援歌になったらいいなと。これを聴いて頑張ってみようと思ってもらえたら、このアルバムを録音した意義がある。アレンジが本当に素敵です」 このうち何曲を歌ってくれるかは当日のお楽しみ。なお、予告されている聖セシリア女子中学高等学校コーラス部との演奏については、感染リスクに配慮して、録画映像によるバーチャルな共演になる模様だ。 美しい声と緻密なアンサンブルが豊かな言葉と結びついて心を揺さぶる魂の歌。IL DEVUのファンは知っている。彼らの歌を聴くとき、マスクはもちろん、人に見られないようにこっそり涙を拭うハンカチを忘れてはいけないことを。

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