eぶらあぼ 2020.10月号
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112CDCDCDCDベートーヴェン:交響曲第7番、レオノーレ序曲第3番/小澤征爾&サイトウ·キネン·オーケストラMY FAVORITES ~morgen!~明日!~/森下幸路&川畑陽子フィンランド ピアノ名曲コレクション/舘野泉日本の歌を集めて4 南天の花/小松英典&塚田佳男ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番交響曲第7番小澤征爾(指揮)サイトウ・キネン・オーケストラクライスラー:愛の悲しみ/フォスター:故郷の人々(スワニー河)/シベリウス:子守唄/グリーグ:君を愛す/エルガー:夕べの歌/ベートーヴェン:君を愛す/ブラームス:瞑想曲/チャイコフスキー:メロディー/コルンゴルト:セレナード/ポンセ:エストレリータ(私の小さな星)/R.シュトラウス:万霊節、明日! 他森下幸路(ヴァイオリン)川畑陽子(ピアノ)シベリウス:「樹の組曲」より/パルムグレン:「3つの夜想的情景」より/カヤーヌス:小さなワルツ/メリカント:ロマンス/ハンニカイネン:夕べに/クーラ:羊飼いのポルカ/メラルティン:雨 他舘野泉(ピアノ)弘田龍太郎:浜千鳥/山田耕筰:葱坊主、南天の花/橋本國彦:富士山見たら/平岡照章:萱野しぐれて/滝廉太郎:秋の月、荒城の月/磯部俶:松の花/平井康三郎:たそがれの旅愁/八洲秀章:あざみの歌/大中恩:秋の女よ/伊藤康英:冬の花 他小松英典(バリトン)塚田佳男(ピアノ)収録:2016年8月、キッセイ文化ホール(ライブ) 他ユニバーサル ミュージックUCCD-40018 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7929 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCT-00177(2枚組) ¥3000+税コジマ録音ALCD-9213 ¥3000+税小澤の85歳の誕生日と楽聖の生誕250年を祝うリリース。序曲は小澤がセイジ・オザワ松本フェスティバルの指揮台に立った最後の年、2017年ライブであり、交響曲はその前年の録音。このオケとはそれぞれ19年と23年ぶりの貴重な録音だ。交響曲第7番は小澤の解釈が悠然としてスケールが大きく実に雄大。主部は爽快な前進リズムで、特に第2主題後半はめくるめく高揚する。木管の美しさも名手揃いのこのオケならでは。緩徐楽章では変奏のメロディと精緻なフガートがとてもきれい。スケルツォのリズムの冴えと終楽章のディオニソス的頂点形成は感動的だ。序曲は中間のトランペット直前の間の取り方がまさに巨匠の芸。(横原千史)ヴァイオリンってこういう楽器だよね! と強く頷きながら何度も聴き通す。大阪交響楽団首席ソロコンサートマスターの森下幸路による会心のアルバムだ。彼の「最愛の曲」の16曲は、すべてじっくりとメロディを歌い込む、甘美な名品ばかり。森下の温かくも懐かしい音色、豊潤なヴィブラート、粋なポルタメント、ノスタルジーをかきたてる歌い回し……いつの間にか忘れかけていたものがここにある。全編が名曲の名奏と言えるが、最後に到達したR.シュトラウス歌曲2作の感動の深さには言葉もない。昔の巨匠の名盤に劣らぬヴァイオリン小品集が、わが国の名手の新盤で味わえるとは、望外の喜び。(林 昌英)1988年の舘野泉のアルバム、待望の復刻盤。シベリウス、カヤーヌス、メリカント、パルムグレンら8名のフィンランドの作曲家による41曲の小品集(2枚組)である。後期ロマン派にあたる彼らのピアノ曲は、透明感のある純朴な風情とともに、民族主義の熱い情念に裏打ちされるかのような力強さと物悲しさとが同居する。舘野の一音一音をクリアに響かせる硬質寄りのタッチと、詩情に満ちた間合いを持たせた演奏が、そうした美質を浮き立たせる。当時舘野はフィンランドで暮らして24年。作曲者や作品について丁寧に書かれた舘野自身によるライナーノートも読み応えがある。(飯田有抄)心に沁みわたる、美しき言葉と旋律。ドイツ・リートの名手として国際的に活躍するバリトンの小松英典が、日本歌曲研究・伴奏の第一人者、塚田佳男と共に取り組む『日本の歌を集めて』シリーズ。第4弾は、原爆病と闘いつつ、医療活動を続けた故・永井隆の詩による佳品〈南天の花〉を標題に。「コロナ禍の今、最前線にいる医師らの姿が重なる」と小松。心を込めて歌い紡がれる21篇の日本歌曲は、曲ごとに異なる陰影を湛え、言葉一つひとつの意味や語調の違いが、丁寧かつつぶさに掬い取られてゆく。塚田のピアノも、言葉を持つように繊細で多様。声・ピアノ・名歌が三位一体となり、琴線に触れる。(笹田和人)

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