eぶらあぼ 2020.10月号
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110CDCDCD松平頼曉 声楽作品集マエストロ・サンティ・オーケストラ・ワークス/サンティ&N響プリエール―モルダウ/山宮るり子アヴェ・マリア 延原武春 心のオーボエ vol.2松平頼曉:アーロンのための悲歌、歌う木の下で、ローテーションⅡ、時の声、サブスティテューション、反射係数太田真紀(ソプラノ) 溝入敬三(コントラバス) 白井奈緒美(サクソフォーン) 山田岳(エレクトリック・ギター) 中村和枝(ピアノ) 甲斐史子(ヴィオラ)プッチーニ:歌劇《ヴィルリ》より〈妖精の踊り〉/チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」第4楽章/ヴェルディ:歌劇《ルイザ・ミラー》序曲/ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」第4楽章、交響曲第8番第1楽章、序曲「レオノーレ」第1番 他ネッロ・サンティ(指揮)NHK交響楽団スメタナ:モルダウ(H.トゥルネチェクによるハープ編)/加藤昌則:ケルト・スピリッツ/ボクサ:ロッシーニの歌劇《セビリアの理髪師》より〈そっと静かに〉に基づくロンド/グルック:聖霊の踊り/グラナドス:オリエンタル/ドビュッシー:月の光/グランジャニー:ラプソディ 他山宮るり子(ハープ)奥村愛(ヴァイオリン)J.S.バッハ(グノー編):アヴェ・マリア/シューベルト:アヴェ・マリア/カッチーニ:アヴェ・マリア/フィオッコ:アリオーソ/マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》より「間奏曲」/モリコーネ:映画『ミッション』より「ガブリエルのオーボエ」/プーランク:愛の小径/山田耕筰:からたちの花 他延原武春(オーボエ)テレマン・アンサンブルコジマ録音ALCD-125 ¥2800+税収録:2005年12月、横浜みなとみらいホール(ライブ) 他マイスター・ミュージックMM-4080 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCL-00731 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7928 ¥2500+税言葉は文字としての相、音としての相、意味としての相と、器楽にはないいくつかの特性を持っている。ここに収録された6作品のテキストのそれぞれに、松平頼曉は異なる相から入りこみ、言葉と音楽の関係性に着目しながら敷衍していく。それは詩句の朗読に薄く音を付けた風情の「歌う木の下で」、隠れキリシタンの旋律を編みなおした「反射係数」といったシンプルな作品化から、歌詞の内容と音楽とのずれ(「サブスティテューション」)、擬音語と楽音との鏡像関係(「時の声」)など高度に実験的なレベルに至る。ソプラノの太田真紀が強力な共演陣とともに、変幻自在の表現力でこの世界に挑んだ。(江藤光紀)今年2月に亡くなった名指揮者ネッロ・サンティを偲ぶ。イタリア・オペラの名匠中の名匠であり、N響にも定期的に出演を重ね、その至芸を何度も披露してくれた。N響とのライブを集めた当コンピ盤は、得意のオペラ楽曲と、歌心に構築性の高さも兼備した交響曲、両面がまとめて聴ける。いずれもN響から明快な音響と劇性を巧みに引き出し、対向配置ならではの第2ヴァイオリン・ヴィオラの表現力も見逃せない。結尾に置かれた序曲「レオノーレ」第1番は、推進力ある快活な流れ、しなやかで瑞々しい響きがすばらしく、サンティの指揮ぶりと笑顔が浮かんでくるような、痛快な名演だ。(林 昌英)ミュンヘン国際音楽コンクール・ハープ部門第2位、リリー・ラスキーヌ国際ハープコンクールで優勝という快挙を成し遂げ、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の首席ハーピストを経て、現在は日本を中心に活躍する山宮るり子のアルバム第2作目。まさにハープの表現力と魅力が惜しげもなく開陳された素晴らしい出来栄え。かなりのアレンジが施されながらも原曲に劣らぬ魅力を放つ「モルダウ」のハープ・ソロ版、センシティヴな歌いくちが堪らぬグルックとドビュッシー、そして圧倒的な技巧を披露しながらも常に余裕に満ち、詩的なグランジャニー…。山宮の卓越した実力がたっぷり堪能できよう。(藤原 聡)テレマン室内オーケストラの創設者にしてオーボエの名手・延原武春の喜寿(77歳)記念アルバム。16年ぶりに録音された「心のオーボエ」第2作でもある。「アヴェ・マリア」「18世紀音楽」「イタリア系作品」「近代フランス作品」「日本の歌」といった括りで美しい小品が続く内容は、“滋味深いアンコール・ピース集”といった趣。延原は、抒情的で優しい各曲を伸びやか且つナチュラルに表現し、滲み出る味わいを聴く者の心に染みわたらせる。なかでも注目は日本の名歌。しみじみとしていながらも雄弁なその演奏は、他では得難い音楽体験をもたらしてくれる。 (柴田克彦)CD

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