eぶらあぼ 2020.10月号
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106 また、今年11月の《メリー・ウィドー》と《魔笛》(21年9月)に出演する嘉目真木子は「まだまだ予断を許さない状況だが、オペラという芸術を届けることができるのは嬉しい。《魔笛》のパミーナは二期会のデビューで歌った役。今度で3回目になるが、いまからワクワクしている」。《ファルスタッフ》でタイトルロールを演じる今井俊輔は「この役を歌えるのはバリトン歌手としてなによりの名誉。フォードとのバリトン二重唱を聴いてもらいたい」と語った。東京二期会http://www.nikikai.net■ONE KANSAIで「関西フィル応援プ ロジェクト」 ~業界を越えた協力で、クラウドファ ンディングを立ち上げ 今年12月に創立50周年を迎える関西フィルハーモニー管弦楽団は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で運営が困難なことから、同楽団首席指揮者の藤岡幸夫が発起人となり、縁のある関西の人々や企業などの協力を得てクラウドファンディングを立ち上げた。8月19日に大阪での記者会見で発表した。藤岡のほか、同楽団の浜橋元・専務理事、元阪神タイガースの掛布雅之、タレントの辰巳琢郎が登壇した。 藤岡は「関西フィルと活動して21年になり、楽団と私の関係は、どのオーケストラよりも濃密だと自負している。コロナ禍で(オーケストラは)大打撃を受けたが、この状況でなければできないことをやろうとクラウドファンディングを立ち上げた。掛布さんが音楽を好きなことも知ってほしい」と語った。 浜橋専務理事は「公演は年間の3分の2程度にあたる約60公演が中止になるなど、現時点で2億円に近い経済的損失がある。クラウドファンディングの目標額の5000万円を集められれば存続できる。関西、全国の皆さまにご支援をお願いしたい」と発言。 掛布は「初めて関西フィルの演奏会に行った時、色んな楽器が一つになり、僕の耳、体に響いてきた。甲子園の左打席で掛布コールを聞くような激しさだった。大変な時代に関西フィルの音は絶対に必要だと思う」と熱く語った。 クラシック音楽に造詣の深い辰巳も「藤岡さんというすばらしい方がいて、関西フィルも公演をもっと開催してほしい。もっともっとクラシック界を引っ張っていってほしい」とエールを送った。■東京二期会が2021/22シーズンライン アップを発表、テーマは「誘惑の綾」 東京二期会の「2021/22シーズンラインアップ」記者発表会が9月2日に開催された。東京二期会理事長・清水雅彦、同常務理事兼事務局長・山口毅、そして二期会会員の嘉目真木子(ソプラノ)と今井俊輔(バリトン)が登壇した。 最初に今年6月、同ポストに就任したばかりの清水理事長が挨拶した。 「コロナ禍という未曽有の困難な状況の中、理事長に選任され身の引き締まる思い。半年にわたる自粛期間中、生の歌声、そして総合芸術というオペラの価値を共有しあうことの大切さがこれまで以上に増しているのではないか。オペラの中にどれほどの人間的営みや精神、愛情の深さが込められているのかを実感し、多くの人たちに伝えていきたい」 続いて山口事務局長からラインアップ詳細が紹介された。二期会は2022年に創立70周年を迎え、《タンホイザー》(21年2月)より3年間にわたり「二期会創立70周年記念公演」と銘打って上演を行う。新シーズンのテーマは「誘惑の綾」で、ドラマの上で“誘惑”がキーとなる名作が並ぶ。また、二期会初の試みとして、この9月に上演した《フィデリオ》を含めオペラの動画配信の実施も発表した。 新シーズンでは《タンホイザー》(21年2月)、《ファルスタッフ》(21年7月)、《影のない女》(22年2月)、《パルジファル》(22年7月)と、海外の歌劇場との共同制作となる大作オペラが並ぶのが大きなトピックだ。左より:山口 毅、清水雅彦、嘉目真木子、今井俊輔 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE

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