eぶらあぼ 2020.09月号
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86SACDCDCD“八木節” 幸松肇編:弦楽四重奏のための日本民謡集 第1集~第4集/クァルテット・エクセルシオLIVE from MUZA! モーツァルト・マチネ 第40回/原田慶太楼&金子三勇士&東響日本歌曲 詩人と作曲家の対話―大嶺光洋 八十歳の表現―/大嶺光洋&宮崎芳弥星月夜/小島弥寧子幸松肇編:弦楽四重奏のための日本民謡集 第1集~第4集クァルテット・エクセルシオ【西野ゆか 北見春菜(以上ヴァイオリン) 吉田有紀子(ヴィオラ) 大友肇(チェロ)】モーツァルト:フルート四重奏曲第3番、交響曲第35番「ハフナー」、ピアノ協奏曲第13番原田慶太楼(指揮) 東京交響楽団金子三勇士(ピアノ) 八木瑛子(フルート) 水谷晃(ヴァイオリン) 武生直子(ヴィオラ) 伊藤文嗣(チェロ)山田耕筰:からたちの花、曼珠沙華、みぞれに寄する愛の歌/信時潔:をみな子よ/橋本国彦:薊の花/越谷達之助:初恋/石桁真礼生:ふるさとの/大中恩:ふるさとの/中田喜直:海四章/木下牧子:物語/平井康三郎:秘唱 他大嶺光洋(バリトン)宮崎芳弥(ピアノ)コレア・デ・アラウホ:第7旋法による高音部のソロのティエント、陽気な羊飼い、第2旋法によるティエントとディスクルソ/柿沼唯:6つのプレリュード、星/ティトゥルーズ:めでたし海の星/ブルーナ:第1旋法による右手のティエント小島弥寧子(オルガン)ナミ・レコードWWCC-7926 ¥2500+税収録:2020年3月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00727 ¥3200+税コジマ録音ALCD-9211 ¥2700+税レグルスRGCD-1050 ¥2900+税我々がよく知る民謡のアレンジとして楽しいし、それぞれが単独の芸術作品という斬新さも持っている、幸松肇の名編曲。“民謡を弦楽器で弾きました”という次元とは一線を画し、日本民謡と西洋弦楽器の表現語法を突き詰め、クラシックの歴史の文脈で再創造した、いわばバルトークの境地に近づくもの。16曲中前半は土俗性や素朴さが強く、後半は独特の渋さや苦みも現れ、飽きさせない。クァルテット・エクセルシオの感興豊かな万全の演奏により、編曲の新しさとともに、原曲の面白さや味わいも失わず楽しめる。昨年の収録だが、“ホーム”で過ごす時間の増えた今こそ聴きたい、好企画のアルバムだ。(林 昌英)ニコニコ生放送による配信で話題を呼んだ東響無観客公演のライブ録音第2弾。活躍顕著な指揮者・原田慶太楼のデビューCDでもある。「モーツァルト・マチネ 第40回」の全プログラムを収録した内容は、3ジャンルが揃った“モーツァルト中期の佳きエッセンス”の趣。フルート四重奏曲は明朗・優美なソロが魅力的だし、「ハフナー」は原田の表現意欲が漲る濃厚かつ活力満点の演奏で、各楽章の性格の描き分けも素晴らしく、ピアノ協奏曲は快速テンポの中で生き生きと弾む金子三勇士のソロが胸を鼓舞する。高音質の録音とともに生気溢れるモーツァルトを満喫できる一枚。(柴田克彦)教育活動や出版社勤務など、様々な社会人経験を積みながら鍛錬を重ね、地道に演奏活動を続けてきた大嶺。歌に対するひたむきな愛情と積み重ねてきた多様な経験は着実に歌へと昇華されており、傘寿を過ぎてなお豊かに響く歌声、そして歌詞の一つひとつに“重み”や“深み”を感じる歌唱を届けてくれる。日本歌曲を代表する作品が集められたこのディスクを聴いていると、日本人が日本語の歌曲を歌うには覚悟が必要だと思い知らされる。言葉の響きの美しさはもちろん、それをどのように自分が理解し、相手に届けたいかということを明確にすることの重要性を改めて教えられた。(長井進之介)小島弥寧子は武蔵野音大大学院などに学び、欧米で腕を磨き、国内外で活躍する実力派オルガニスト。今回の録音は、軽井沢の小ホールに設置された古様式の楽器を弾き、17世紀スペインの作品を大枠に、国際的に活躍する作曲家、柿沼唯による「6つのプレリュード」などを挟み込んだ、興味深いラインナップで臨んだ。本来はチェンバロのために書かれたという柿沼の作品。同じ鍵盤楽器ながら、減衰音ではなく、オルガンの持続音によって、いっそう“浮力”を得たよう。ふわりと舞い上がり、古の作品の柔らかな色彩とも溶け合って、聴く者を未知の響きの世界へといざなう。(寺西 肇)CD

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