eぶらあぼ 2020.09月号
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32永峰高志(ヴァイオリン)巨匠ヨアヒムの愛器で紡ぐ至高のロマン取材・文:柴田克彦Interview N響で首席奏者等を35年間務めた後、国立音大の教授、ソロ、室内楽、指揮と多方面で活躍中の永峰高志。彼はこのほど、ヴァイオリンの歴史的巨匠J.ヨアヒムが愛奏したストラディヴァリウス「Joachim, 1723」を用いたアルバム『ロマンス』をリリースした。巨匠と同時代の作品を、当時の残り香を湛えた響きで聴かせる、興味津々の一枚だ。 まずはこの名器について。 「国立音大が所有する楽器で、貸与されて4年ほど経ちます。普通の楽器よりサイズが大きく、もともと硬めの音ですが、音のスピードが速くてレスポンスがよく、音に力強さや主張があります」 本ディスクには「ヨアヒムが友情の核となったシューマン夫妻とブラームス、そして自身の作品」を収録。前半は「ロマンス」が3曲並ぶ。 「まず弾きたかったのがクララ・シューマンの『3つのロマンス』。これはヴァイオリンのメロディも綺麗ですが、日本人唯一のベーゼンドルファー・アーティスト、久元祐子さんのピアノも聴きどころです。彼女はモーツァルトが得意で音が美しく、ピアノの前奏で始まるこの曲は特に素晴らしい。次のヨアヒムの『ロマンス』は、ブラームス等の協奏曲のカデンツァの印象とは違ってフレンドリーな音楽。ここでは彼がどんな曲を作ったのかを聴いてほしい。さらには有名なシューマンの『ロマンス』。私がとても好きな曲で、ヴァイオリンの艶を感じていただけると思います」 後半はブラームスのソナタ第1番「雨の歌」。 「これも好きな曲です。第1楽章は巨匠風の遅い演奏になりがちですが、実はヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ。ですから私は速めのテンポで演奏し、葬送の曲でブラームスが『なるべく遅く』と述べた第2楽章と対照させています。第3楽章は私が思うブラームスのイジイジしたイメージ通りに進み、最後に救われる。今回はそうした表現をしたいと思いました」 本作のもう1つの特徴は音の入口と出口にある。 「入口はDXD384KHz音源に対応するスペックを持つ、高解像度マイクロフォン。特別な銅を使ったオールハンドメイドのもので、高域が完全に上まで伸びます。そして出口は『ハイレゾ配信』『CD』『アナログ・レコード』の3種類。中でも力が入っているのは、子どもの頃から作るのが夢だったレコードです。『180g重量盤LP』で数量限定。内面の表現など演奏の面白さがよりわかると思います」 いずれ本作と連動したコンサートも行う予定だが、彼は現況に即した発信もしている。 「Facebookに『音楽をする意味』を書きました。これは音楽、文化によって『冥土の土産のお手伝いをしたい』といった主旨。もし、この音楽を“心の宝石箱”の片隅に入れてもらえると、僭越ながら嬉しいですね」 様々な思いのこもった本ディスク、ぜひ耳にされたい。黒田鈴尊 × LEO 尺八と箏 邦楽の響宴共鳴し合う2つの和楽器が織りなす未来の響き文:笹田和人 「国際尺八コンクール2018 in ロンドン」で優勝を果たし、国際舞台でも活躍する尺八の黒田鈴尊。そして、16歳にして「くまもと全国邦楽コンクール」を史上最年少で制した十七絃のLEO(今野玲央)。伝統を重んじつつ、ジャンルを横断して活動する邦楽界の2人のプリンスがタッグを組み、時空を超えた「未来の響き」を紡ぐ。 黒田は、人間国宝の二代青木鈴慕らに師事し、早稲田大卒業後に東京藝大・同大学院に学び、電子音楽とのコラボなど、邦楽器の新たな可能性を追究、9/4(金)13:30 高崎芸術劇場 音楽ホール問 高崎芸術劇場チケットセンター  027-321-3900http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/LEO国内外で精力的に活動する。一方のLEOは東京藝大在学中で、19歳の時にCDデビュー。ユニークな活動ぶりがTBS『情熱大陸』で取り上げられ、話題となった。 ステージでは、宮城道雄「春の海」など邦楽器のための作品はもとより、気鋭の現代作曲家・藤倉大による「竜」、バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」ほか西洋クラシック、さらにピアソラ「リベルタンゴ」まで披露。両者が創り上げる音の力で、過去・現在・未来と東洋・西洋が、ごく自然に溶け合わされてゆく。黒田鈴尊CD&LP『ロマンス』マイスター・ミュージックMM-4079¥3000+税(CD)MMLP-9001¥7000+税(180g重量盤LP)©Michiko Yamamoto

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