21上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団シューマンの馥郁たるサウンドを二大傑作で堪能する文:長谷川京介第626回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉10/30(金)19:15、10/31(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 新日本フィルとの最後のシーズンを迎える上岡敏之による得意のシューマン・プログラム。 シューマン「ピアノ協奏曲」を弾くのは、フランス人ピアニスト、クレール=マリ・ル・ゲ。1998年度“ヴィクトワール ドゥラ ムジーク”賞を受賞、バレンボイムとの米国ツアーをはじめ、クレーメルやデュメイ、ケラスと共演するなどヨーロッパとアメリカで高い評価を受けている。 上岡とは昨年ラヴェル「ピアノ協奏曲」で共演しており、二人の信頼の絆は深い。理知的で清冽なタッチのル・ゲと、ピアニストでもある上岡が、ピアノ協奏曲の最高峰のひとつでいかなる高みに達するのか、興味は尽きない。 後半は、シューマンが1850年に作曲した傑作、交響曲第3番「ライン」。この年シューマンはライン河畔にあるデュッセルドルフ市の音楽監督に任命され、ドレスデンから転居してきた。 「ライン」はシューマンがつけたタイトルではないが、シューマンが受けた明るく快活なライン地方の印象が反映されていることは確かだ。当初第2楽章は「ライン河の朝」と題され、第4楽章はケルン大聖堂にインスピレーションを得て「荘厳な儀式の伴奏の性格で」と記されたが、いずれも後に削除された。 上岡は新日本フィルと2年前に第1番「春」をとりあげたが、ふくよかで透明感のある響きの中に、旋律を美しく歌わせる手腕が光っていた。聴くたびに進化を感じる上岡のことだから、「ライン」はさらに新鮮な解釈を聴かせてくれることだろう。大いに期待したい。第500回日経ミューズサロン 日経ミューズサロン第500回記念ガラ・コンサート日本クラシック界のレジェンドたちが集う豪華な響宴文:片桐卓也9/11(金)14:00 18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 http://www.nikkei-hall.com 1971年にスタートし、国内外の一流アーティストを招き、豊かな室内楽の世界を堪能させてくれたコンサート・シリーズ「日経ミューズサロン」がこの9月11日に500回目となる記念の回を迎える。そこで企画されたのが、このコンサート・シリーズの草創期を飾ってくれた日本クラシック界のレジェンドとも言える演奏家たちを集めた、夢のような豪華な響宴である。 その出演者は、安倍圭子(マリンバ)、井上久美子(ハープ)、工藤重典(フルート)、荘村清志(ギター)、徳永二男(ヴァイオリン)、室井摩耶子(ピアノ)の面々。それぞれがそれぞれの楽器の世界で頂点に登り詰めたと言ってもいい演奏家ばかりであり、特にピアノの室井は現役最高齢の演奏家としてもいまだ注目を集める存在である。総合司会には朝岡聡を迎える。 演奏曲目は、それぞれが大事にしてきた作品ばかり。マリンバの安倍は自作を2曲、ハープの井上はトゥルニエを、フルートの工藤はプーランクのフルート・ソナタなどを(ピアノの工藤セシリアが共演)、ギターの荘村はバリオスとピポーの作品を、ヴァイオリンの徳永はサン=サーンスの名曲「序奏とロンド・カプリチオーソ」(ピアノは坂野伊都子が共演)を、ピアノの室井はベートーヴェンの「エリーゼのために」を披露する。これだけの豪華なアーティストが集まる機会は今後ないだろうと思われるだけに、ぜひともその姿を生で目にしたい。コンサートは午後2時と午後6時半の2回行われる。左より:安倍圭子/井上久美子/工藤重典 ©土居政則/荘村清志 ©Hiromichi NOZAWA/徳永二男 ©Tomoko Hidaki/室井摩耶子クレール=マリ・ル・ゲ ©Carole Bellaiche上岡敏之 ©堀田力丸
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