76SACDCDCDR.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、「死と浄化(変容)」/ノット&東響カルリーチェク・セクエンツァ ライヴ・イン・松本Ⅱ藤枝守:ルネサンスの植物文様/西山まりえシューマン:ヴァイオリンとピアノのための作品集/白井圭&伊藤恵R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、交響詩「死と浄化(変容)」ジョナサン・ノット(指揮)水谷晃(ヴァイオリン)東京交響楽団スメタナ:「夢」より〈ボヘミア農民の祭り〉/ドビュッシー:チェロとピアノのソナタ/ラフマニノフ:4手のための6つの小品/フォーレ:悲歌(エレジー)/R.シュトラウス:チェロ・ソナタ、「情緒ある風景」より〈さびしい泉のほとり〉/ポッパー:メヌエットカルリーチェク・セクエンツァ【ヨゼフ・カルリーチェク(チェロ) ペトル・カルリーチェク マルティン・カルリーチェク(以上ピアノ)】藤枝守:植物文様第8集 pattern B、同26集「茶の文様」よりpattern B「矢部」、同第27集「台湾茶曲集-Ⅰ」pattern A~D、同第20集「ベゴニア・イン・マイ・ライフ」 pattern B・pattern D、同第22集「ハーンの向日葵」pattern D、植物文様ソングブック第1番「蘭の名前」より〈パフィオペディラムの奴隷〉 他西山まりえ(ルネサンス・ハープ/チェンバロ)R.シューマン:ロマンス 第1番~第3番、ヴァイオリン・ソナタ 第1番・第2番、予言の鳥(L.アウアー編)白井圭(ヴァイオリン)伊藤恵(ピアノ)収録:2018年12月、サントリーホール(ライヴ) 他オクタヴィア・レコードOVCL-00728 ¥3200+税収録:2019年7月、ザ・ハーモニーホール(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7925 ¥2500+税OMFKCD-2070 ¥2545+税フォンテックFOCD9835 ¥2800+税一味違った味わいの名演と言うべきノット&東響のR.シュトラウス。この指揮者の手にかかると聴き慣れた有名曲ですら秘められていた「本質的な相貌」を顕にすることが多いが、「英雄の生涯」は冒頭から力みのないしなやかな響きを常に意識、和声感を重んじているようだ。と同時に多層的な各声部の明晰な抽出の手腕も見事なもので、全体と細部への目配せが二つながらに生きている。ソナタ形式とも捉えられる「死と浄化(変容)」もその構成を顕在化させるように演奏されていて、ともするとありがちな肥大や誇張とは無縁。微塵も通俗性の感じられない格調高い演奏にノットの見識と手腕を見る。(藤原 聡)チェコ・ボヘミアのカルリーチェク家の3兄弟、ペトル(ピアノ)、ヨゼフ(チェロ)、マルティン(ピアノ)は、ともにプラハ音楽院などに学んだ後、それぞれオランダ、ドイツ、カナダで研鑽を積み、ソリストとして国際的に活動している。そんな彼らは2年前、トリオとして再結集。当盤は、昨年7月に長野・松本で行った来日公演の実況録音。故国が誇るスメタナに仏露独の佳品を配し、ソロから4手連弾、組み合わせを変えてのデュオまで、編成も自在に。兄弟ならではの阿吽の呼吸を見せる一方、理知的なペトル、熱っぽいヨゼフ、大胆なマルティンと、一人ひとりの個性も際立つ。 (笹田和人)植物の葉と茎の電位変化から得られたデータを音に変換、枝葉を広げるように創作を重ね、また違う楽器へと変態させるユニークな創造を、藤枝守はもう四半世紀も続けている。ゴシック・ハープとチェンバロ、二つの古楽器を操る手練れ・西山まりえが2014年の第一弾に続き再びこれに挑戦した。情報を(おそらくは)旋法的に読み換え、操作することで出現するのは、文様のように終わりなく浮遊する実に不思議な時空間だ。それはルネサンス音楽の記憶をこだまさせながら、パターンごとに異なる肌触りで聴き手を優しく包みこむ。いつの間にか、空想の森の新鮮な空気の中へと解き放たれていた。(江藤光紀)シューマンのヴァイオリン作品は、この楽器ならではの華やかさを発揮しにくい難しさがあるが、日独で活躍し、ウィーン・フィルでも演奏した名手・白井圭と、シューマンをライフワークとしている名匠・伊藤恵が、ひとつの回答を提示した。古典作品と向き合うようなスタンスで楽譜に接し、中音域を丁寧に弾きこむことでシューマンの意図をすくい上げ、見通しの良い美しさと淡いロマンを聴かせる。特に作曲者41歳の落ち着いた充実感が込められたソナタ第2番は、聴きごたえ十分の作品と演奏であり、心に残る。3つのロマンスの配置を分け、謎めいた「予言の鳥」で締める工夫も面白い。(林 昌英)CD
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