34上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団熟成コンビが描く近代フランスの多彩な精華文:柴田克彦第626回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉10/30(金)19:15、10/31(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp 任期最後の5年目を迎える音楽監督・上岡敏之&新日本フィル。既成概念に囚われない音楽作りで深化を遂げてきた当コンビの集大成となる来シーズンは、毎公演が傾聴必須と言っていい。 上岡が振る10月定期「トパーズ」はフランス音楽。2019年3月のフランス・プロでもマニャールの交響曲等で清新な衝撃を与えた彼らは、今回も刮目すべきプログラムを用意した。まず目をひくのが1862&65年生まれのドビュッシーとデュカスの対比。同時代のパリで交流しながら、かたやフランス本流の印象派の大家、かたやドイツ音楽の色薫る孤高の寡作家となった二人の作品の比較は極めて興味深い。ドビュッシーの演目は「海」。上岡の精妙なアプローチで描かれるこの名曲の響きと綾が実に楽しみだ。対するデュカスは「魔法使いの弟子」ではなく、序曲「ポリュクト」と舞踏詩「ラ・ペリ」。前者は生涯最初の主要作でワーグナーの香り漂うドラマティックな音楽、後者は最後の主要作で神秘的かつ艶美かつ色彩的な音楽である。デュカスの変遷を示す組み合わせは妙味十分だし、傑作と称されながら生演奏の稀な両曲を一挙に堪能できる喜びも大きい。 もう1つ、プーランクのピアノ協奏曲もある。同曲はお洒落なメロディとエスプリに溢れた円熟期の傑作にして、「スワニー河」等の引用も愉しい万華鏡のような音楽だ。独奏は2019年にラヴェルの協奏曲で魅せたフランスの名花クレール=マリ・ル・ゲ。気品と壮麗さを併せ持つ彼女のピアノにも期待が集まる。 フランス近代音楽の多様性を知らしめる本公演。あらゆる意味で聴き逃せない。銀座ぶらっとコンサート #149 通崎睦美(木琴)懐かしくも細やかな色彩あふれる通崎ワールド全開のプログラム文:オヤマダアツシ8/26(水)13:30 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp 木琴という楽器でジャンルを超越した音楽とカラフルな音を紡ぎ出し、聴き手を楽しく、ときにはノスタルジックな気分へと誘ってくれる通崎睦美。通算で149回を迎える銀座・王子ホールの人気シリーズ「銀座ぶらっとコンサート」へ登場する彼女がテーマにするのは、『過ぎ行く夏を楽しむサマーフェスタ』だ。今年の前半は閉塞感の強い毎日を送った分、開放的な気分になるであろう夏を惜しむような8月下旬に、都会の中でちょっとしたミニ音楽祭を楽しめるようなプログラムである。 オリエンタルなラヴェルの曲やモンティの「チャールダーシュ」ほかクラシックの作品、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中で歌われる可憐な「エーデルワイス」、発見に満ちたルネサンス時代の音楽、「春の海」や「リンゴの唄」など日本の名曲、ピアソラのタンゴ・ナンバー等々…素敵な音楽にジャンルは無用。すべてが通崎睦美ワールドの音楽であり、1曲1曲がこの夏の光景を振り返るテーマ音楽かもしれない。 そのガイド役である通崎のほか、ゲストとして現代の作品なども手掛ける箏奏者の西陽子と、多彩な音色で空気に色を付けるアコーディオン奏者の松原智美が登場。昼下がりのひとときをリラックスして過ごしたい方に、(このシリーズの人気スイーツであるヨックモックのお菓子が味わえるティータイムも含め)楽しんでいただきたいコンサートだ。©Nakagawa Tadaakiクレール=マリ・ル・ゲ ©Carole Bellaiche上岡敏之 ©堀田力丸
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