30マクシム・エメリャニチェフ(指揮) 東京交響楽団世界が注目する話題の俊英指揮者がふたたび登壇文:江藤光紀東京オペラシティシリーズ 第117回9/5(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp 東響の9月定期には一昨年に来日した俊英マクシム・エメリャニチェフが再登場する。 この人、数年来音楽界をざわつかせているクルレンツィス&ムジカエテルナで要の通奏低音を務めてきたのだが、指揮者としてもこのところメキメキと頭角を現している。古楽アンサンブル「イル・ポモ・ドーロ」の首席指揮者としてバロック・オペラなどに手腕を発揮、2017年にはグラモフォン賞、19年の国際オペラ・アワードでは新人賞に輝くなど躍進を遂げている。今シーズンにはスコットランド室内管の首席指揮者に就任したが、早々に契約延長が発表されるなど、期待にたがわない大物ぶりで、就任に先駆けて録音された同楽団との「グレイト」も評判は上々だ。筆者はニジニ・ノヴゴロド・ソロイスツ室内管(彼は同地の音楽院の出身)との「英雄」を聴いたが、透明な空気感の中を軽やかなテンポで駆け抜けるフレッシュな演奏で、洗練されたいで立ちが印象的だった。ロジェストヴェンスキーに指揮を学び、クルレンツィスと切磋琢磨――面白くないわけがなかろう。 さて、2度目となる東響との共演では、いよいよ鍵盤奏者としてもヴェールを脱ぐ。弾き振りに選んだ曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。内省的な性格を強めていく作曲家像をどう描き出すか。この曲をハイドンの「太鼓連打」、ベートーヴェンの「運命」という二つの交響曲ががっちりと包み込む。古典派音楽のど真ん中をずばっと抉るプロだが、通り一遍の演奏では終わらなさそうなセンセーションの予感。マクシム・エメリャニチェフ未来の音 vol.31 チェルカトーレ弦楽四重奏団ロマン派のカルテットの傑作群を若き4人が濃密に描く文:笹田和人9/26(土)15:00 めぐろパーシモンホール(小)問 めぐろパーシモンホールチケットセンター03-5701-2904https://www.persimmon.or.jp 若きカルテットがひたむきに“探究”する瑞々しいハーモニーを体感したい。注目の新進演奏家を紹介するシリーズ「未来の音」に、関朋岳と戸澤采紀(ヴァイオリン)、中村詩子(ヴィオラ)、牟田口遥香(チェロ)と、ソリスト級の俊英たちで組織された「チェルカトーレ弦楽四重奏団」が登場。ドイツ・ロマン派の佳品の数々を、覇気に満ちたプレイで綴る。 同四重奏団は2017年4月、東京音大、東京藝大、東京藝大附属高校に在学中の4人で結成。妥協せず、奥深い弦楽四重奏を究めたいと、イタリア語で「探究者」を意味する「チェルカトーレ」を団体名に冠した。第15回ルーマニア国際音楽コンクールのアンサンブル部門で、最高位の第2位に。現在は全員が大学に在籍中で、さらなる研鑽を積んでいる。 「弦楽四重奏の最大の魅力は、迫力と繊細さの共存。土台となる低音、旋律的な高音、その間を縫う内声が時に交錯し、新たな響きを作り出します」と戸澤。「私たちは第1・第2ヴァイオリンを、曲によって交代するので、ぜひその音色の違いを感じながら聴いていただければ」と語る。 ステージでは、まず、単一楽章ながら、非常に密度の濃いシューベルトの「四重奏断章」こと第12番を。そして、シューマン自身が「最上の作品」と述べた3曲の弦楽四重奏曲の中でも、最も緻密で人気の高い第3番を披露。さらに、メンデルスゾーンが、ベートーヴェンの死後、楽聖へのオマージュを込めて書いたとされる第2番ほか、「心から共感の念を覚える」(牟田口)という4曲を弾く。左より:牟田口遥香、中村詩子、戸澤采紀、関 朋岳
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