288/30(日)15:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp※本公演は座席数限定のため完売となりました。東京文化会館オペラBOX《アマールと夜の訪問者》人の心の通い合いと幸福を描く小品オペラの傑作文:岸 純信(オペラ研究家) 世の中が刺々しい昨今だが、規制の緩和を受けて、社会の空気も徐々に和らいでくれればと切に願う。さて、この8月末には、「人の心をほぐす小品オペラ」が上演される。お題はジャン=カルロ・メノッティ作曲の《アマールと夜の訪問者》全1幕である。1951年に米国のNBCでテレビ放送すべく書かれた一作であり、演奏時間は50分弱の短さながら、人の心の通い合いと母子の愛情に満ちた物語の力もあって、今日まで忘れられずに上演されている。作品の成立はルネサンスの宗教画に由来 メノッティは生粋のイタリア人。もともと語学に堪能で、オペラの台本を自作できるほどの筆力も有していたので、この《アマール》の英語のリブレットも自分で書き上げた。物語は、新約聖書に名高い「神の子を礼拝する東方の三博士」のエピソードを描いた絵画(ルネサンス期フランドルの画家、ヒエロニムス・ボスの作)にヒントを得て、メノッティが創案したものである。 その舞台は、三人の王様が、イエス・キリストの生誕地となるベツレヘムを訪問する途中で立ち寄った貧しい家。脚が不自由で正直者の少年アマールが母親を助けているが、嘘のない彼の心を認めた王様が祝福することでアマールは健康を回復。普通に歩けるようになり、王様たちとともに、神の子の誕生を祝うべく旅立つが、その際には、貧しさゆえに罪を犯した母親も許される。我が子の出立を見送る彼女が、いつまでも手を振るなかで幕が下りるという、ほのぼのとした、心温まる名作オペラである。一線で活躍するアーティストが集結 今回は、日本語字幕付きの原語(英語)での上演とのこと。《アマールと夜の訪問者》は小編成のオーケストラで演奏されるオペラだが、今回は楽器をピアノ(高橋裕子)、チェロ(三井静)、クラリネット(須東裕基)の3つに絞り、日本のオペラ界を背負って立つ温厚で緻密なマエストロ、園田隆一郎が指揮。第一線で活躍中の演出家で、人情の機微にとても敏い岩田達宗がステージングを担当する。 そして、歌手勢も豪華。東京音楽コンクール声楽部門の入賞者を中心に、実力派の面々が集う。まず、アマール役は小柄でパワフルなソプラノ盛田麻央、母親はヴェテランならではの温厚な響きを持つメゾソプラノ山下牧子、王様の一人カスパールは新星テノール小堀勇介、メルヒオール王は気鋭のバリトンの高橋洋介。従者役もバリトンの龍進一郎であり、バルタザール王は、低音の要の役柄としてバスバリトンの久保田真澄が担当するとのこと。みな、豊かな声音で「優しく真面目でいる素晴らしさ」を表現することだろう。また、コーラス(コーロ・パストーレ)や児童合唱&ダンス(リトルシェパーズ)も加わるので、短い上演時間でもオペラの本格的な味わいが舞台に満ちることだろう。 なお、ステージ前半は指揮者と演出家のトークになり、メゾソプラノの富岡明子やバリトンの寺田功治の出演で、メノッティのオペラ《泥棒とオールドミス》のアリアや、メノッティのパートナーでもあったバーバーのオペラ《ヴァネッサ》の名場面も歌われる。ナビゲーターの朝岡聡も出演するので、ステージ上の活発なやりとりを通じて、20世紀アメリカのオペラ模様を知る好機としても注目して欲しい。山下牧子盛田麻央岩田達宗 ©大阪音楽大学園田隆一郎 ©Fabio Parenzan新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、公演やイベントの延期・中止が相次いでおります。掲載している公演の最新情報は、それぞれの主催者のホームページなどでご確認ください。
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